2016年 07月 07日
著作 平成27年(ネ)10042号 テレビマンユニオン著作権侵害訴訟事件 |
◆歴史番組で自分の小説のスト―リーを丸写しされて著作権が侵害されたとして歴史小説家が番組制作会社を訴えていた事件の控訴審。
【歴史小説、著作物性、事実/事件/アイディアetcの模倣、表現上の本質的特徴、歴史上の事実そのもの、見解や歴史観、歴史上の事実の選択配列、事実の選択や配列に創作性が発揮、シークエンスの翻訳、佐藤雅美】
(歴史小説の内容がどのような場合に著作物性ありと判断されるか?)
「 (1) 翻案について
ア 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,
変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作
物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当たらないというべきである(最1小判平成13年6月28日・民集55巻4号837頁参照)。
したがって,歴史上の事実や歴史上の人物に関する事実は,単なる事実にすぎないから,著作権法の保護の対象とならず,また,歴史上の事実等についての見解や歴史観といったものも,それ自体は思想又はアイデアであるから,同様に著作権法の保護の対象とはならないというべきである。他方,歴史上の事実又はそれについての見解や歴史観をその具体的記述において創作的に表現したものについては,著作物性が肯定されることがあり,事実の選択,配列や,歴史上の位置付け等が著作物の表現上の本質的特徴を基礎付ける場合があり得るといえる。
イ 本件において,控訴人は,原告各小説の各ストーリーを構成する個々の出来事の選択とその配列の仕方に創作性があると主張し,各ストーリーを構成する出来事に5つのWが備わっていれば,それを複数選択し,配列したものには,創作性があると主張する。
しかし,原告各小説は歴史を題材とした小説であるから,5つのWを備えた出来事を複数組み合わせて配列しただけでは,歴史上の事実等の経過を示したものにすぎないこと,あるいは,これらの事実等についての見解や歴史観を示すものにすぎないことがあるから,常に著作権法の保護の対象となるとはいえない。控訴人主張に係る各ストーリーに創作性があり,事実の選択や配列が表現上の本質的特徴を基礎付けるというためには,5つのWを備えた出来事を複数組み合わせて配列することだけでは足りず,少なくとも,事実の選択や配列に創作性が発揮されているといえなければならない。 」
(同一性保持権)
「…違法な改変,つまり,同一性保持権(著作権法20条)を侵害する行為とは,表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為である(最2小判平成10年7月17日・裁判集民事189号267頁)。」
・原審・東京地方裁判所平成25年(ワ)第15362号
(知財高裁2部清水裁判長)
◆Memo:
・東京地裁(一審)では、原告小説の著作権侵害と認められた個所が幾つか有り。
(2016.7.7. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-07-07 20:30
| 著作権法
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