2016年 07月 14日
特許 平成27年(行ケ)10164号 電気コネクタ組立体 無効審決取消訴訟事件 |
◆コネクタの発明の進歩性が争点となった事件。知財高裁では進歩性有りと判断。
【進歩性、特§29②、相違点の認定誤り、実質的な相違、設計的事項、容易の容易、機械構造的な位置変更が仮に周知だとしても構成未達、動機付けが無いことの理由付け(技術的観点から)】
(容易想到性 について)
「 (2) 相違点4の容易想到性
イ これに対し,引用発明は,前記5(2)のとおり,嵌合状態において,相手コネクタ33の姿勢の変化に応じて,回転中心突起53の溝部49の突出部に対する位置が変化するものであるということはできず,また,同(3)のとおり,嵌合の解除状態において,相手コネクタ33を時計方向に回転しただけでは,回転中心突起53が溝部49に形成された肩部56のケーブル44側に当接されたままであるため,溝部49の突出部の回転中心突起53に対する干渉はなくなっておらず,相手コネクタ33の姿勢を上向き姿勢とするだけでは,相手コネクタ33の抜出はスムースに行い得ない。引用発明においては,相手コネクタ33のコネクタ35からの抜出を可能とするには,相手コネクタ33の姿勢を上向き姿勢とした上で,コネクタ31の端部内面へ向かう突合方向に引っ張るような力を相手コネクタ33に加えることで,回転中心突起53を溝部49の肩部56の後部にある突出部の下方の当接位置(第3図の位置)から溝部49の直下の肩部56の位置にスライドし,回転中心突起53と溝部49の突出部との当接を解除する操作が,別途必要である。
ウ 以上によれば,仮に操作性を向上させるために操作部を操作対象となる機械要素に設けることや,コネクタの分野ではコネクタの前端部に前方へ突出する持上げ部を設けることが周知であったとしても,引用発明において,相手コネクタ33の前端部に前方へ突出する持上げ部を設けただけでは,相違点4に係る本件発明の構成には至らない。そして,本件発明において,相違点4に係る構成は,コネクタ嵌合状態の解除操作について固有の作用を奏するものであって,単なる設計的事項にすぎないということはできない。
さらに,引用発明において,相手コネクタ33の前端部に前方へ突出する持上げ部を設けたとしても,上記持上げ部で,相手コネクタ33をコネクタ31の端部内面へ向かう突合方向にスライドさせる操作を行うことが,左右端部に持上げ部を設けて,この操作を行う場合に比べ,容易になるものではなく,操作性の向上に寄与するということはできない。そうすると,引用発明において,コネクタの前端部に前方へ突出する持上げ部を設けることにつき,動機付けがあるということもできない。
エ したがって,引用発明において,相違点4に係る本件発明の構成を備えることに,当業者が容易に想到することができたということはできない。 」
ヒロセ電機 vs. 日本圧着端子
(知財高裁4部高部裁判長、平成28年7月13日 審:×→裁:○)
(2016.7.14. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-07-14 19:55
| 特許裁判例
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