2016年 07月 21日
特許 平成27年(行ケ)10186号 アンカーピン拒絶審決取消訴訟事件 |
◆拒絶審決に対する審決取消訴訟で特許庁が後出した証拠について認めてよいかどうか等が争点となった事件。
【進歩性、特許法29条2項、出願当時の技術常識、周知例、取消訴訟で追加可能な新証拠、最高裁判例】
「 原告は,乙第9及び10号証は,いずれも審判時に提出されていなかったものであり,本件審決の違法性を争う本件訴訟において,このような証拠は許容すべきではない旨主張する。
審決取消訴訟においては,審判手続において審理判断されていなかった資料に基づく発明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違法を判断することは許されないが(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照),審判手続において審理判断されていた資料に基づく発明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違法を判断するに当たり,審判手続には現れていなかった資料に基づいて上記発明が属する技術分野の当業者の出願当時における技術常識を認定し,これによって上記発明の有する意義を明らかにした上で無効理由の存否を認定したとしても,審判手続において審理判断されていなかった資料に基づく発明と対比して無効理由の存否を認定し,審決の適法,違法を判断したものということはできない(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。
本件審決は,審判手続において審理判断されていた引用発明1と対比して,「挿入部(13)」の成形に関する相違点2の容易想到性の判断をするに当たり,審判手続には現れていなかった周知例1及び2に基づいて,当業者の技術常識を認定し,これによって,引用発明1において,上記周知技術を採用して相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易であった旨の判断をした。
そして,乙第9及び10号証は,本件審決による上記判断の誤りの有無を判断するに当たり,本願出願日当時の上記周知技術に関する技術常識としてテーパ形状の拡底部を有するアンカーボルトにおける一体成形に関する技術を立証するものであるから,本件訴訟の判断資料とすることは,許容されるものということができる。
⑸ 小括
以上によれば,本願発明は,引用発明1及び2に基づいて容易に想到することができたものということができるから,本件審決の判断に誤りはなく,取消事由1は,理由がない。 」
(知財高裁4部高部裁判長)
(2016.7.21. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-07-21 13:02
| 特許裁判例
|
Comments(0)