2016年 12月 04日
特許 平成28年(ネ)10080号 スクリューポイント事件(控訴審) |
◆進歩性欠如の無効理由があるとして、権利行使が制限(特§104の3)された事件。知財高裁でも進歩性欠如の判断。
◆東京地裁 平成26年(ワ)第11244号
【侵害訴訟、無効の抗弁、進歩性、侵害訴訟、スクリューポイント、商業的成功/長年解決されなかった課題】
◆知財高裁 平成28年(ネ)第10080号
(進歩性について)
「…したがって,スウェーデン式サウンディング試験装置において,モータからロッド部材を経てスクリューポイントへ至る動力伝達経路中に,無頭ねじ部品を設けることは当業者が必要に応じて容易に想到し得るので,乙2発明において,めねじ部21に継手ロッド3のおねじ部31が螺合して連結する構成(スクリューポイントと継手ロッドとの直接連結構成)に代えて,本体部の基端部に形成しためねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結する構成(無頭ねじ部品を介する連結構成)とすることは容易に想到することができると認められる。その際に,無頭ねじは,継手ロッドとスクリューポイントとを,ねじを用いて連結できればその機能を果たすものであるから,拡巾部を有することは必ずしも必要な構成ではなく,拡巾部を有さない周知の無頭ねじを採用することは設計事項にすぎないと認められる。
(イ) また,スクリューポイント2への接続を継手ロッド3の直接連結構成に代えて無頭ねじを介して連結する構成とすれば,スクリューポイントに連結される無頭ねじを,継手ロッド3のおねじ部31と同様に,従来のスクリューポイントのおねじにかかっていた回転力に耐え得る強度を有する材質のものとすることは,当然になし得る。
したがって,相違点1に係る本件発明1の構成は容易に想到することができる。 」
※商業的成功/長年解決されなかった課題
「カ 発明の困難性及び商業的成功について
控訴人は,従来のおねじ一体型のスクリューポイントではおねじ部が折れやすいという問題点が長年解決されなかったこと,及び本件特許の出願人であり権利者の商業的成功が,本件発明1に進歩性があることを肯定する要素になる旨主張する。
しかし,本件発明1が進歩性を有するかどうかは,先行技術との比較で決まるのであって,課題が長年解決されなかったことや商業的成功があるからといって,進歩性が認められるものではなく,証拠(甲31)を考慮しても,進歩性は認め難く,控訴人の上記主張は理由がない。 」
日東精工、GEプランニング、田井精機
(知財高裁4部高部判事、平成28年11月30日)
(進歩性について)
「…したがって,乙2発明とは相違点1がある本件発明1を前提にしても,そのスクリューポイントにおいて,本体部とこれに連結するねじ部分を硬度及び靱性の高低の観点から性質を異ならしめ,本体部の硬度をねじ部分より高くし,ねじ部分の靱性を本体部より高くすること(相違点2)は,当業者が適宜なし得たことにすぎないことといえる。
ウ 相違点1について
上記(4)に認定のとおり,本件特許出願前に「標準貫入試験装置におけるサンプラのコネクターヘッドとロッドとを連結するロッドカップリングが無頭ねじである構造。」(乙16発明),及び「土壌などの棒入度試験装置におけるロッド及び構成部品の連結に使用できる結合部33が無頭ねじである構造。」(乙10発明)が開示されており,地質試験装置における継手(連結)手段として,無頭ねじ部品を用いることは,本件特許出願前から公知である。また,乙3ないし乙5公報,乙7公報及び乙17公報には,無頭ねじを用いた継手(連結)手段が開示されており,多くの技術分野で,継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは,本件特許出願前から周知の技術であったといえる。 上記アのとおり,乙2発明は,スクリューポイント本体部とこれに接続するねじ部に要求される,それぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的としているものであるが,上記イのとおり,ねじ部にスクリューポイントと異なる性質を有する材料を使用することは当業者が適宜なし得たことであり,そして,一般的に,器具や装置などを構成する複数の部品(部分)をそれぞれ製作し,その後に組み付けて一体のものとするか,複数の部品(部分)を一体成形するかは,当業者がそれぞれの有利な点,不利な点を考慮して適宜に決定し得ることであるといえるところ,乙2発明の技術分野と共通する地質試験装置における継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは公知であり,また,一般的に継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは周知であることからすれば,ねじ部品とロッド部品とをそれぞれに必要な性質を確保することができるように,またそれぞれの部品の製作がしやすいように別体に製作することは,当業者が容易に着想し得たことといえる。
したがって,スクリューポイントの基端部に雌ねじを設けることを特徴とする乙2発明において,これに接続するねじ部に異なる性質を備えさせるため,ロッド部との連結手段として,ロッド部そのものに雄ねじを設けるのではなく,これに無頭ねじ部品を用いて,スクリューポイント本体部の基端部の雌ねじとロッド部を連結すること,すなわち本件発明1における上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。 」
(大阪地裁21部森崎裁判長)
◆Memo:
・一体か別体かの選択…「当業者がそれぞれの有利な点,不利な点を考慮して適宜に決定し得ること」、「必要な性質を確保することができるように…」。
・関連事件:平成28年(行ケ)10027号 (知財高裁4部)
(2016.8.10. 弁理士 鈴木学)
(2016.12.4. 追記)
by manabu16779
| 2016-12-04 18:30
| 特許裁判例
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