2016年 08月 22日
特許 平成27年(行ケ)10149号 グラブバケット事件 |
◆進歩性欠如を理由とした無効審決が知財高裁で取り消された事件(容易の容易→§29②×)。
【審決取消、無効審判、進歩性、容易の容易、2段ステップの論理付け、引用文献で認識されていない課題、周知技術適用の動機付け、行訴§33】
「 イ 相違点2の容易想到性について
(ア) 本件審決は,浚渫用グラブバケットに関する発明である引用発明1において,同じく浚渫用グラブバケットに関する周知技術2及び3並びに引用発明3を適用して相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことであると判断した。
(イ) 相違点2は,シェルの構成に関するものである。しかし,引用例1(甲1)には,専ら,バケットの吊上げ初期の揺れがほとんど発生せず,開閉ロープのロープ寿命も長くなる浚渫用グラブバケットの提供を課題として(【0005】),上部シーブ,下部シーブ,バケット開閉用の開閉ロープ及びガイドシーブの構成や位置によって上記課題を解決する発明が開示されており(【請求項1】~【請求項3】,【0006】,【0016】),シェルに関しては,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明のいずれにも,「各シェル部1A,1Bは軸3で開閉自在に軸支され,下部フレーム2に取付けられている。」(【0008】)など,他の部材と共にグラブバケットを構成していることが記載されているにとどまり,シェル自体の具体的構成についての記載はない。引用例1においては,前記⑴ア(ア)のとおり,上記発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケットの側面図【図1】及び正面図【図2】に加え,従来のグラブバケットの側面図【図6】及び正面図【図7】において,シェルが図示されているにすぎない。
したがって,引用例1には,シェルの構成に関する課題は明記されていない。…略…
しかしながら,前記⑷のとおり,シェルの上部に空気抜き孔を形成するという周知技術3は,シェルの上部が密閉されていることを前提として,そのような状態においてはシェル内部にたまった水や空気を排出する必要があり,この課題を解決するための手段である。引用例1には,シェルの上部が密閉されていることは開示されておらず,よって,当業者が引用発明1自体について上記課題を認識することは考え難い。当業者は,前記のとおり引用発明1に周知例2に開示された構成を適用して「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」という構成を想到し,同構成について上記課題を認識し,周知技術3の適用を考えるものということができるが,これはいわゆる「容易の容易」に当たるから,周知技術3の適用をもって相違点2に係る本件発明の構成のうち,「前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成」する構成の容易想到性を認めることはできない。
エ 小括
以上によれば,相違点2が容易に想到できるとした本件審決の判断には誤りがある。 」
光栄鉄工所 、ミノツ鉄工
(知財高裁4部高部裁判長 審:×→裁:○)
◆Memo:
・容易の容易は容易ではない。
(2016.8.22. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-08-22 12:21
| 特許裁判例
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