2016年 09月 21日
特許 平成27年(行ケ)10244号 離型フィルム事件 |
◆離型フィルムの発明につき知財高裁でも進歩性有りと判断された事件(無効審判審決取消訴訟)。
【進歩性、特§29②、動機付け、示唆】
(本件発明1に係る引用発明1Cに基づく進歩性判断の誤り)
「 (2) 前記3(2)で述べたとおり,引用発明1Cには,引用発明1Cに包含される多数の樹脂の中から,エチレン-メタアクリル酸メチル共重合体とポリプロピレン樹脂を選択して組み合わせ,また,エチレン-メタアクリル酸メチル共重合体がメタアクリル酸メチルから誘導される単位を5重量%以上14重量%以下含有するとの構成(相違点A)が開示されているということはできない。したがって,相違点Aに係る本件発明1の構成を採用すべき示唆や動機付けがされているとは認め難い。そして,引用例2及び引用例3にも,かかる構成を採用すべき記載や示唆はされていない。
(3) 原告の主張について
ア これに対し,原告は,引用例1の実施例5(【0063】)のエチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)とポリプロピレン(PP)との組成物において,エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)をエチレン-メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)に置き換えることが容易であると主張する。
しかし,引用例1の実施例1ないし3(【0059】~【0061】)はエチレン-メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)単体の使用であるから,ポリプロピレン(PP)との組成物においてこれを試みる動機付けがあるとは直ちにいえないこと,エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)とエチレン-メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)とを対比すると,エステル部分と官能基部分に相違があり,両物質の性質が極めて類似するとまではいえないこと,エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)はポリオレフィン(ポリプロピレンはその代表的なものである。)との相溶性が特に優れ(甲13),実施例5においてポリプロピレンと互いに溶け合ったEEAをEMMAに置き換えることには阻害事由があるともいえることからすれば,上記置換をするだけの動機付けがあったということはできない。
イ また,原告は,MMA含有率の調整は設計事項であると主張する。
しかし,引用例1には,ポリプロピレン(PP)とエチレン-メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)の組合せにおいて,MMA含有率をどのように調整するかについては記載も示唆もされておらず,本件発明1における,MMA含有率を5重量%以上14重量%以下とする構成を採用する動機付けはないこと,MMA含有率を変更することによってエチレン-メタアクリル酸メチル共重合体(EMMA)の種々の物性が変わり得ることからすれば,選択した2つの樹脂の組合せにおいて,MMA含有率を調整することが設計事項にすぎないということはできない。
(4) 小括
よって,本件発明1は,引用発明1Cから容易に想到することができるものではなく,取消事由2は理由がない。 」
住友ベークライト
(知財高裁4部高部裁判長)
(2016.9.21. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-09-21 19:29
| 特許裁判例
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Comments(1)
Commented
by
特許業界・知的財産業界情報トップス
at 2016-09-23 01:43
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たいへんユニークで示唆に富む内容を拝見し、特許業界・知的財産業界情報トップス(http://iptops.com/)にリンクを追加させていただきました。なお、特許業界・知的財産業界情報トップスをリンク集などに加えていただくようなことがございましたら幸いでございます。今後もよろしくお願い申し上げます。
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