2016年 10月 04日
特許 平成27年(行ケ)10253号 水障壁封止方法審決取消訴訟事件 |
◆発光ダイオードの発明に関し、本願発明と引用発明との対比判断の当否等が争点となった事件。
【進歩性、一致点・相違点】
「 3 取消事由2(本願発明と引用発明との対比判断の誤り)について
(1) 原告は,審決が,引用発明の有機膜基板12は炭素を含む層であるにもかかわらず,これを除いた有機コーティング16のみを,本願発明の「炭素を含む層」に相当するとして,本願発明と引用発明とを対比判断したことは,誤っている,と主張する。
(2)ア 審決は,引用発明の有機膜基板12を,本願発明の「多層水障壁封止構造」に含めず,「基板」又は「有機発光ダイオード」でもない,本願発明の請求項1に記載されていない任意の構成であるとして,本願発明と引用発明を対比したものである。
イ 本願発明の有機発光ダイオードは,請求項1の文言上,「基板」,「基板の上に配置される有機発光ダイオード部分」及び「有機発光ダイオード部分上に配置される多層水障壁封止構造体」を「含む」ものである。「基板」の下,「基板」と「有機発光ダイオード部分」との間,「有機発光ダイオード部分」と「多層水障壁封止構造体」との間,及び,「多層水障壁封止構造体」の上に何らかの構成を有することを排除するものではない。本願明細書には,「多層水障壁封止構造」の基板と反対側に特段の構造を有しないことに何らかの効果その他の意味があるとの示唆もない。
また,本願明細書【0027】は,上記1のとおり,「基板」「有機発光ダイオード部分」又は「多層水障壁封止構造体」に含まれない,「封止層406」が存在するものを本願発明の実施形態としており,「封止層406」は「有機」封止層であり(【図4】),水障壁機能を有する(【0031】)ものである。したがって,本願発明は,「多層水障壁封止構造体」に含まれないが,「有機」の層であって水障壁機能を有しない構成を有していてもよいものである。
ウ 上記イのとおり,本願発明は,「基板」「有機発光ダイオード」及び「多層水障壁封止構造」以外の構成が存在することを排除していないし,当該他の構成は「有機」であって,水障壁機能を有していてもよい。そうすると,本願発明は,本願明細書【図4】のような,「多層水障壁封止構造」と「基板」との間に,「有機発光ダイオード」を包み込むような態様ではなく,「多層水障壁封止構造」の「基板」側とは反対側に「有機」であって水障壁機能を有する構造があることをも許容すると解するのが相当である。
したがって,審決が,引用発明の「有機膜基板12」を,本願発明の「多層水障壁封止構造」に含めず,本願発明と引用発明とを対比したことに,誤りはない。 」
(知財高裁2部清水裁判長)
(2016.10.4. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-10-04 12:30
| 特許裁判例
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