2016年 10月 13日
特許 平成27年(行ケ)10262号 棚装置無効審判審決取消訴訟事件 |
◆訂正が新規事項の追加に該当するか等が争点となった事件。
【新規事項追加、特許法134条の2、特許法126条5項、6項、進歩性、容易想到性、動機づけ】
「 (ア) 原告は,訂正事項1について,審決は,「下端部」が「先端部」と同じ意味であることは明らかであると断定しているが,本件明細書には「先端部」という記載はなく,「下端部(自由端部)6a」,「下端部6a」という記載しか存在しないの
であるから,本件明細書に全く記載のない全く別概念である「先端部」という表現を用いた訂正を行うことは,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるとはいえず,新規事項を追加するものであり,違法である旨主張する。
しかし,本件明細書の「棚板2は,水平状に広がる平面視四角形の基板4と,基板4の各辺から上向きに立ち上がっている外壁5と,外壁5の上端に連接した内壁6とから成っており,」(段落【0016】),「図3(B)に示すように,・・・内壁6のうち外壁5に繋がる連接部11は本実施形態では略平坦状の姿勢になっている。他方,内壁6の下端部(自由端部)6aは,外壁5に向けて傾斜した傾斜部になっている。」(段落【0021】)との記載によれば,図3(B)の実施形態において,内壁6の上端部は,外壁5との連接部11であり,外壁5に繋がる固定端部であるのに対し,内壁6の下端部6aは,自由端部であり,下端部6aよりも先には内壁6の部分が存在しないことから,内壁6の先端部であると認められる。そして,このような内壁6の構造は,本件明細書の図5(A),(B)などにも記載されているものである。 したがって,訂正事項1の「先端部」との表現を用いた訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内のものであるから,原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,「先端部」という用語は,上下方向に限られない先に位置する部分を指す語であるから,「先端部」は「下端部」よりも広い部分を指すことになるので,本件発明において,「下端部」の代わりに「先端部」という語を用いると発明の範囲を広げることになる旨主張する。
しかし,本件明細書には,「なお,本願発明の棚板は基板の周囲に外壁を備えているが,棚板は基板から上向きに立ち上がっていても良いし,下向きに垂下していても良い。」(段落【0010】)と記載されているところ,後者の外壁が下向きに垂下する構成を採用する場合,内壁の先端部は下端部ではなく,上端部となることは自明である。そうすると,本件明細書に明示的に記載があるのは「下端部」との語のみであるとしても,内壁の先端部について,「下端部」のみならず「上端部」も本件明細書に記載されているに等しいものと認められるから,本件明細書に記載されていると認められる事項が「下端部」に限定されるものでないことは明らかである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。 」
サカエ、コージ産業
(知財高裁1部設樂裁判長)
(2016.10.13. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-10-13 12:55
| 特許裁判例
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