2017年 03月 15日
特許 平成28年(ネ)10100号 電動リール事件(控訴審) |
◆特許発明の技術的範囲に属すると認められたが、進歩性欠如の無効理由があり権利行使不可と判断された事件。東京地裁・知財高裁のいずれも進歩性否定。
◆平成28年(ネ)10100号 知財高裁 進歩性…× http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/595/086595_hanrei.pdf
「 …そうすると,乙18公報の記載及び上記周知の技術事項を踏まえた当業者において,釣竿とリール本体とを片手で把持した状態でのその手の指による操作性の向上を図るため,操作部材の配設位置や形態に係る周知技術を適用して,乙18発明のモータ出力調節体をより操作性のよいものに変更することには,動機付けがあるということができる。 そして,乙18公報には,前記 のとおり,実施形態として,モータ出力調節体をリール本体の反ハンドル側で,かつ後方側(釣糸巻取方向側)の上部に回転魚釣用電動リールにおいて,駆動モータの出力を調節する操作部材を,リール本体ないし制御ケースの後方側で左右いずれか寄りの位置であって,釣竿及びリール本体を片手で把持した状態でその手の親指が届きやすい位置に設けることは,原出願の出願日前に当業者に周知であったものと認められる。 そうすると,乙18公報の記載及び上記周知技術を踏まえた当業者において,釣竿とリール本体とを片手で把持した状態でのその手の指による操作性の向上を考慮して,「制御ケースの前後方向のほぼ中央で,リール本体の左側板の上部にその側板の表面から露出した状態で」制御ケースに設けていた乙18発明のモータ出力調節体を,制御ケースの後方側に配置することにし,「制御ケースの後方側で,リール本体の左側板の上部にその側板の表面から露出した状態で」制御ケースに設けるようにすることは容易に想到できたことである。 」 (知財高裁4部高部判事、平成29年3月14日)
◆平成27年(ワ)3187号 東京地裁 進歩性…×
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/176/086176_hanrei.pdf
【技術的範囲、特70条、無効理由、進歩性、特§104の3、課題と動機付け、リール、フォースマスター、訂正】
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/176/086176_hanrei.pdf
「相違点の容易想到性
ア 本件発明2の課題等に関する本件明細書2の記載は本件明細書1とほぼ同旨であり(甲2,4),相違点A及びBについては,前記5 エのとおり,容易想到であると解することができる。
イ 相違点Eについてみるに,スライド式の操作部材をダイヤル式とすること,ダイヤル式の操作部材を略円筒形状としてその外表面の一部を露出させることは本件特許2の出願日前に周知であったと認められる(前記5ウ 及び )。操作部材の直径及び軸方向長さの範囲については,本件明細書2に直径を10~24mm,軸方向長さを2~20mmとした場合に操作性が良好である旨の記載はあるものの(段落【0025】),上記範囲未満又は超過の場合と比較した実験結果等は示されていない(甲4)。
また,操作部材は,リールを装着した釣竿を片手で把持した際にその手の親指で操作されることから(同 ),直径及び軸方向長さは指先の可動域及び親指の幅に応じておのずから限定されるところ,直径及び軸方向長さに係る上記数値範囲は,親指の大きさ(乙36の1・2参照)から通常想定される範囲を規定したにとどまると解される。
ウ 以上によれば,相違点A,B及びEにつき本件発明2の構成を採用することはいずれも容易であり,操作性の向上という課題に照らし,これらの構成を組み合わせることに動機付けがあるものと認められる。したがって,本件発明2は容易に発明をすることができたと判断すべきである。」
グローブライド、シマノ
(東京地裁46部長谷川裁判長)
◆Memo:
・機械構造系の数値範囲限定、実験結果。
(2016.10.25. 弁理士 鈴木学)
(2017.3.15. 追記)
by manabu16779
| 2017-03-15 20:40
| 特許裁判例
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