2016年 09月 01日
特許 平成27年(行ケ)10128号 半導体装置事件 |
◆引用発明からの容易想到性の判断。
【進歩性、課題に反する変更、阻害要因、動機づけ、設計事項/設計的事項】
「ウ 以上によれば,甲1公報と原告が主張する前記各刊行物に接した当業者は,
甲1公報記載の端子間距離,スパッタ層の厚さのものについて,エッチング性を低
下させることなく耐マイグレーション性を向上させるという甲1発明の課題に反し
てまで,バリア層のクロム含有率を増加させることを想到するに至る動機付けはな
く,また,端子間距離のファインピッチ化がより進んだものについても,バリア層
のニッケル-クロム合金のクロム含有率を増加させることによりバリア層の溶出に
よるマイグレーションを抑制するとの解決手段を記載する適切な公知刊行物がない
ことからすれば,上記解決手段を容易に想到するものということはできない。
(2)ア 原告は,甲1公報には10重量%を超えたクロム含有量を有するバリア層
(スパッタ層)も耐マイグレーション性を向上させる効果がある旨示唆されている
から,甲1公報に接した当業者において,バリア層のクロム含有量を耐マイグレー
ション性の向上効果がある10重量%を超えた範囲に設定することは,単なる設計
事項である旨主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,甲1公報には,スパッタ層のクロム含有量が1
0重量%を超えても耐マイグレーション性の向上効果はほぼ同一であると記載され
ているのみならず,かえってエッチングによるパターン形成時の銅の足残りが多く
なるという問題が記載されているのであるから,甲1公報に接した当業者において
上記課題に反してまでバリア層のクロム含有量を10重量%を超える範囲にするま
での動機付けが生ずるものとは認められない。 」
住友金属鉱山、シャープ
(知財高裁1部設樂判事、平成28年7月28日)
(2016.10.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-09-01 19:43
| 特許裁判例
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