2016年 11月 18日
特許 平成27年(ワ)34732号 農作業機の整地装置事件 |
◆農作業機の特許権侵害訴訟で、無効理由有りと判断した上で構成要件の充足性も判断した事件。構成要件E充足せず非侵害。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/265/086265_hanrei.pdf
「 イ 被告各製品について (ア) 被告各製品において,コントロールロッドのロックを解除すると,レベラがごくわずかに上方に回動するが(甲13の1),この回動は,コントロールロッドのロックを解除した際のはずみといって差し支えないほどのごくわずかな回動であって,それ以上に上方に回動することはなく,「位置」が設定されて移動したものとは評価することができないものであるし,その際のレベラの位置は,整地作業位置(整地作業に適した位置)であるとはいえない。 (イ) 次に,被告各製品は,①コントロールロッドをロックしてレベラを圃場に当接させた状態でコントロールロッドのロックを解除すれば,レベラが上方に回動することがあり(甲13の2),また,②コントロールロッドのロックを解除し,レベラがそれ以上下方には回動しない状態とした上,作業機全体を十分に持ち上げてコントロールロッドをロックすれば,レベラは下方に回動する(当事者間に争いがない。)。 しかしながら,上記①の場合において,レベラは,コントロールロッドのロックが解除されたことにより上下回動自在となったところ,圃場面に接していることから,圃場面から上方への作用を受けて上方に回動し,整地作業位置(整地作業に適した位置)となった(作業者がレベラを圃場面に押し付けるような作業をし,レベラが圃場面から作用を受けている状態で,作業者がコントロールロッドのロックを解除したことにより,レベラが移動し,整地作業位置となった)ものというべきであって,モータの回動運動から伝達された作用がコントロールロッドに及ぼされてこれがレベラに伝達されることによりレベラが移動したものではないから,「支持ロッドを介して・・・整地作業位置・・・に設定」するもの(整地体操作手段にて整地作業位置に設定するもの)には当たらない。 また,上記②の場合にレベラの場所が移動することは確かであるが,特許請求の範囲の請求項1は,「前記整地体を整地作業位置及び土寄せ作業位置に設定する整地体操作手段と,この整地体操作手段を駆動操作する正逆転用モータ」と規定しており,本件明細書の段落【0007】ないし同【0012】の記載からしても,本件発明は,整地体を整地作業位置に設定する動作と土寄せ作業位置に設定する動作とを対の運動(モータの正逆運動)により制御・操作されるものと規定していることが明らかである。しかるところ,上記②の場合(コントロールロッドのロックを解除し,レベラがそれ以上下方には回動しない状態とした上,作業機全体を十分に持ち上げてコントロールロッドをロックし,レベラが下方に回動した状態)とした後,更にコントロールロッドのロックのロックを解除しても,上記(ア)のとおり,レベラは,ごくわずかにしか上方に回動せず,これをもって「位置」が設定されて移動したものと評価することはできないというべきであるから,上記②の事実のみをもって,被告各製品が「支持ロッドを介して前記整地体を整地作業位置及び土寄せ作業位置に設定する」ものであるということはできない。 ウ 小括 以上によれば,被告各製品においては,本件発明の「整地体」に相当するレベラは,本件発明の「支持ロッド」に相当するコントロールロッドに及ぼされる作用が伝達されることによって,「整地作業位置」と「土寄せ作業位置」という2つの異なる場所に移動するものではない。 したがって,被告各製品は,「前記機枠に設けられ前記支持ロッドを介して前記整地体を整地作業位置及び土寄せ作業位置に設定する整地体操作手段」を有さず,構成要件Eを充足しないというべきである。 」 松山株式会社、小橋工業 (東京地裁29部嶋末裁判長)
【技術的範囲の解釈、特許法70条1項、2項、進歩性、特許法104条の3】
(2016.11.18. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-11-18 18:55
| 特許裁判例
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