2016年 11月 28日
特許 平成28年(行ケ)10008 加湿器審決取消訴訟事件 |
◆加湿器の制御の発明に関し、引用例どうしを組み合わせる動機付けの有無等が問題となった事件。動機付け有り、進歩性否定。
【進歩性、容易想到性、特許法29条2項、技術分野共通、共通の課題の示唆、室内温度/湿度、使用者の好み】
(容易想到性)
「…引用発明と,引用例2に記載された技術事項とは,いずれも周囲環境の温度に応じた設定湿度に基づいて加湿制御を行う加湿器(又は加湿装置)という共通の技術分野に属する。 そして,前記アの引用発明の目的,構成及び作用効果に照らせば,引用発明は,過加湿による不快感や結露の解消のみならず,人が感じる快適な湿度の実現を課題とするものであるということができる。
他方,引用例2には,「本発明によれば,入力手段によって少し加湿,もっと加湿を含む相対的体感湿度情報を入力し,この相対的体感湿度情報および湿度検知手段で検知した室内の湿度に基づいて加湿手段を制御するので,使用者の体感に合った湿度を適確かつ簡単に設定することができる。」(【0037】)と記載されているところ,リモコン又は操作部上のボタンを操作することにより,使用者の体感に合った湿度を設定することは,使用者の好みに応じた湿度を設定することを意味し,また,このように適確かつ簡単に設定することができるようにすることは,使用者の好みに応じた湿度を設定することによりさらに快適な湿度を実現することに相当するということができる。
そうすると,引用発明と引用例2に記載された技術事項とは共通の技術分野に属することに加え,引用例2には,引用例2に記載された技術事項が引用発明の「人が感じる快適な湿度の実現」という課題を解決し得るものであることが記載又は示唆されているから,引用発明における加湿部の能力制御に用いられる「室温に対応して予め定められた目標相対湿度」に対し,さらに快適な湿度を実現するために,前記イの引用例2に記載の所望の設定湿度の設定方法に係る技術を適用することには,動機付けがあるということができる。
エ したがって,引用発明において,加湿部の能力制御に用いられる「室温に対応して予め定められた目標相対湿度」の設定に対し,引用例2に記載の所望の設定湿度の設定方法に係る技術事項を適用して,「室内温度での湿度設定に使用者の湿度の希望の高め・低めとを加味した加湿程度を選択可能な加湿程度選択手段」を設け,選択された加湿程度及び検出された室内温度に基づいて目標相対湿度を設定することは,当業者が容易に想到することができたことである。 」
シャープ、ダイニチ工業
(知財高裁4部高部判事、平成28年10月26日)
(2016.11.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-11-28 12:25
| 特許裁判例
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