2016年 11月 29日
特許 平成28年(行ケ)10010号 データ送信方法事件 |
◆無線データ送信の発明の進歩性が問題となった事件。特許庁・知財高裁ともに進歩性無しと判断。
【進歩性、特許法29条2項、単一アンテナ、複数アンテナ、802.11a規格】
「(3) 相違点1について
ア 引用発明である SFC-OFDM 方式は,802.11a 規格の物理層に対して SFC(空間周波数符号)が与える影響を評価する目的で提示されたものである。より詳細には,引用発明は,2×2 MIMO-OFDM システムであって複数アンテナでデータの送信を行うものであり,SISO システムである単一アンテナの 802.11a システムとの比較で評価すると,空間にわたる独立性及びインターリーバ・ゲインが向上する。そして,引用発明においてアンテナストリーム上のデータが 802.11a 規格に基づくインターリーバでインターリーブされることに注目すると,引用発明は,802.11a 規格に基づく SISO システムを改良して,MIMO システムとして複数アンテナでデータを送信するようにしたものであると理解される(前記2(2))。
この点を踏まえるとともに,MIMO システムの規格である 802.11n がSISO システムの規格である 802.11a に対して後方互換性を保持することが周知であること(前記(2)ウ(エ),(オ))に鑑みれば,802.11a に基づく SISO システムを改良して MIMO システムとした引用発明においても,802.11a に基づく SISO システムに対して後方互換性を持つようにする動機は十分に存在するというべきである。また,MIMO システムの SISO システムに対する後方互換性の具体例として複数アンテナを使って送信するモードと単一アンテナを使って送信するモードとを切り替え可能にすることが周知であること(前記(2)ウ(カ))を考慮すれば,引用発明を,複数アンテナモードと単一アンテナモードとを切り替え可能に構成することは,当業者が容易になし得たことであると認められる。
したがって,相違点1については,当業者が容易に想到し得たものと認められる。 」
コーニンクレッカ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成28年11月22日)
(2016.11.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-11-29 20:10
| 特許裁判例
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