2016年 12月 01日
特許 平成28年(行ケ)10036号 ブルニアンリンク作成デバイス事件 |
◆ネックレス等に使われる部品を作るための器具の進歩性が問題となった事件。動機付け無し、進歩性肯定。
【無効審判、訂正、進歩性、§29②、動機付け、ブルニアンリンク、編み機、溝(開口部)の位置の相違、設計的事項?、平成28年(行ケ)第10035号】
「 イ 相違点2,4,6及び8の容易想到性について
甲2発明は,「編み物を作成するための編み機」であり,編みの性格上,かぎ針(フック)の操作方向は,ペグ(ピン)の列の方向と交差する方向となり,そのため,甲2発明のペグの溝は,ベースの隙間とは反対側のペグの面側,すなわち,ペグの列の方向と交差する方向に形成されている。
甲10発明も,同様に,「編み物製品を作成するための手編み用の編み機」であり,編みの性格上,フックの操作方向は,ピンの列の方向と交差する方向となり,そのため,甲10発明のピンの溝は,ピンの外側に面している側面側,すなわち,ピンの列の方向と交差する方向に形成されている。
そして,これらは,編み物用の編み機である以上,本件訂正発明のように,ピンの列の方向に連続したリンクを形成していくためにフックをピンの列の方向に操作するという使い方を想定していない。
また,甲2及び甲10以外の証拠を検討しても,編み物用の編み機である甲2発明又は甲10発明について,ピンの列の方向に連続したリンクを形成していくためにフックをピンの列の方向に操作すること,そのためにフック挿入用の「開口部」を「ピンの列の方向の前面側」に設けることを開示ないし示唆する証拠は見当たらない。
そうすると,甲2発明において,相違点2に係る本件訂正発明1の構成又は相違点4に係る本件訂正発明6の構成とすること,あるいは,甲10発明において,相違点6に係る本件訂正発明1の構成又は相違点8に係る本件訂正発明6の構成とすることは,いずれも動機付けがなく,当業者が容易になし得ることとは認められない。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,アクセス溝が外側を向いていようが,ピンの列の方向の前面上に位置させようが,容易にブルニアンリンクアイテムを作成できることに違いはないのであるから,アクセス溝の位置がいずれの向きであるかは,当業者が編み機を製造するに当たり適宜選択する事項であり,単なる設計事項にすぎないと主張する。
しかしながら,甲2発明及び甲10発明は,編み物を作成するための編み機であるところ,甲2及び甲10には,ブルニアンリンクに関する記載や示唆はなく,この編み機をブルニアンリンクを作成するために利用することの記載や示唆もないというべきであるから,仮に,アクセス溝の向きに関わらず,容易にブルニアンリンクを作成できることが事実であったとしても,そのようなブルニアンリンクの作成に係る事実が,編み物を作成するための編み機である甲2発明及び甲10発明の開口部の向きを変更する動機付けになるということはできない。
原告の主張は,理由がない。 」
ハナヤマ
(知財高裁2部清水判事、平成28年11月28日)
◆Memo:
・設計事項(装置構成が類似)→作製する対象が異なる(ブルニアンリンク≠編み物)、開口部位置を変更する動機付けの有無。
・阻害要因&有利な効果 ×
(2016.12.1. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-12-01 20:55
| 特許裁判例
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