2017年 01月 04日
特許 平成27年(ワ)9891号 清掃用不織布の製造方法侵害訴訟事件 |
◆歯の清掃用具に関して、原告の特許権を侵害するか否かが問題となった事件。技術的範囲に属さず、非侵害。
【侵害訴訟、特許法70条、製造方法、ウレタン、発泡、圧縮メラミン系樹脂発泡体、語句の解釈、試験実験】
「2 争点(1)イ(構成要件B1及びB2の「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」の充足性)について
事案に鑑み,争点(1)イについて判断する。
(1) 「柔軟な」の意義について
ア 「柔軟な」という用語の意味について検討するに,JIS工業用語大辞典第4版(甲27)によれば,「容易に手で折りたたまれ,ねじ(捻)られかつ湾曲させられること」をいうものとされている。そして,前記1(2)のとおり,本件各発明は,メラミン系樹脂発泡体からなる掃除具における「折り畳み可能な変形能や,清掃対象面の形態に応じて変形可能な掃除具の柔軟性等」が乏しいという課題を解決することを目的とするものであることから,本件各発明における圧縮・加熱の工程を経たメラミン系樹脂発泡体が「より柔軟」になったということは,圧縮・加熱前よりも,容易に折り畳みが可能で,清掃対象面の形態に応じて変形することができるようになったことを意味すると考えられる。
したがって,本件各発明における「柔軟な」とは,容易に折り畳んだり変形させたりできることを意味するものと認めることが相当である。
…略…
以上からすると,被告各製品及び被告製造方法において,メラミン系樹脂発泡体が,圧縮・加熱後に,「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟な」ものとなっていると認めるに足りる証拠がないというほかない。
エ ところで,甲32試験によれば,圧縮前のサンプルの厚さを圧縮後のものと同じ厚さとなるようにした場合,圧縮後のものの方が曲げ強度が高いという結果が得られているものの,甲45試験によれば,圧縮前のサンプルの厚さを圧縮後のものと同じ厚さとなるようにはしない場合には,圧縮前のものの方が曲げ強度が高い。
そして,本件各発明では「加熱前のメラミン系樹脂発泡体よりも柔軟なシート状物」に賦形するのであるから,加熱後のメラミン系樹脂発泡体について,厚さが加熱前と同じになるように切除するなどして調整することなく,加熱前後のメラミン系樹脂発泡体をそのまま比較することが相当であると考えられるところ,原告が主張するように「曲げ強度が高い」ことが「靱性が高い」ことを意味すると解したとしても,上記各試験の結果によれば,加熱後の方が曲げ強度が高いと認めることができないから,圧縮・加熱により,加熱後の方が「靱性が高い」ものとなったということはできない。
そうすると,仮に,「より柔軟な」という文言が原告の主張するように「より靱性が高い(破壊し難い)」という意味を有していたとしても,被告各製品について,圧縮・加熱後の方が「より靱性が高い(破壊し難い)」ことについてはそれを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
(3) したがって,被告各製品は構成要件B1を充足せず,被告製造方法は構成要件B2を充足しない。そして,構成要件B2を充足しない被告製造方法により製造された被告各製品は,構成要件A3を充足しない。 」
大文字、広栄社、日本歯科工業社
(東京地裁40部東海林裁判長、平成28年12月16日)
(2017.1.4. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-04 20:35
| 特許裁判例
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