2017年 01月 10日
特許 平成28年(行ケ)10026号 グラウト注入方法事件 |
◆地盤強化方法の発明の進歩性が問題となった事件。進歩性無しと判断、審決取消。
【無効審判、周知技術の認定、訂正、容易想到性、特許法29条2項】
「 エ 小括
以上から,本件発明1の「(a)予め流量を決め地盤抵抗圧力を測定し,」との構成が,周知技術ではないとした審決の認定には,誤りがある。
(3) 容易想到性について
本件発明1は,前記(1)のとおり,(a)(b1)(b2)の構成を有しているところ,試験注入において,地盤抵抗圧力をどのように測定するかという点と,本施工において,測定された地盤抵抗圧力をどのように用いてグラウト注入を行うかという点は,それぞれ独立の技術的事項であるから,少なくとも,地盤抵抗圧力をどのように測定するかという(a)の構成と,本施工において,測定された地盤抵抗圧をどのように用いるかという(b1)(b2)の構成とは,その容易想到性を別々に考慮してよいものである。そうすると,上記(2)イのとおり,本件発明1の(a)の構成は,周知技術であるから,地盤抵抗圧力(注入圧力)を限界注入圧力Prfの限界内で設定する甲1発明において,その注入圧力の決定について,周知技術である相違点2に係る本件発明1の(a)の構成を採用することは,当業者が適宜なし得ることである。
また,前記(1)のとおり,甲1には,審決が甲1発明を構成するものとして認定する(A1)(B1)の構成のほか,(A2)(A3)(B2)の構成が開示されている。本件発明1の「地盤抵抗圧力」に相当する甲1発明の分岐圧力計P 11 の圧力値は,2kgf/cm2であり,本件発明1の「地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力」に相当する甲1発明の送液圧力計P 0 の圧力値は,30kgf/cm2であるから,甲1発明においては,地盤抵抗圧力よりも高い強制圧力となるようにグラウトが負荷されている。そうすると,甲1の(A1)~(A3)(B1)(B2)の構成は,本件発明1の(b1)(b2)の構成を開示しているものといえる(審決も,本件発明2に係る無効理由の判断中で,甲1発明の(A1)(B1)に相当する構成が,本件発明1の(b1)(b2)に相当する本件発明2の構成に相当すると判断している。)。
以上によれば,本件発明1の(b1)(b2)の構成が,甲1の記載に基づいて,当業者において容易に想到できるものであることも,明らかであり,審決の相違点2の判断には,誤りがある。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,取消事由には,理由がある。 」
強化土エンジニヤリング、強化土株式会社、シモダ技術研究所
(知財高裁2部清水判事、平成28年12月26日)
(2017.1.7. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-10 13:02
| 特許裁判例
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