2017年 01月 11日
特許 平成28年(行ケ)10113号 レーザ着火装置事件 |
◆レーザ光でエンジンを着火させる発明の進歩性が争点となった事件。進歩性無し。
【動機付け、マイクロチップレーザ、周技技術、小型化/効率化、普遍的な技術課題、特許法29条2項、拒絶審決、審決取消訴訟、脱退、訴訟引受け、参加人】
(容易想到性)
「 イ 容易想到性の判断の誤りについて
引用発明は,「低消費電力で安定した着火性能を発揮するレーザ点火プラグ,及びレーザ着火装置,及びエンジンを提供する」(引用文献の【0006】)という課題を解決するものであるから,その構成の「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置」に代えて,「半導体レーザ(LD)並みに,小型であり,エネルギー効率が高い」周知技術のマイクロチップレーザを用いることは,装置の小型化及び効率化という普遍的な技術課題の解決に当たって,広く知られた技術事項を適用したというだけであって,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
原告は,本願補正発明は,マイクロチップレーザから出射されるレーザ光が,「混合気に着火するためのプラズマをターゲット部において発生させることができるレーザ光の強度範囲を広く確保することが可能となる」との知見に基づいてされたものであるところ,この知見は,引用文献,甲2及び甲4のいずれにも記載がなく,示唆もされていないと主張する。
しかしながら,相違点に係る本願補正発明の構成は,レーザ光源として周知技術のマイクロチップレーザを用いたということであって,上記知見を反映した構成ではない。したがって,当業者は,そのような知見がなくても,普遍的な技術課題に従って相違点に係る本願補正発明の構成を採用することを動機付けられる。上記知見が引用文献,甲2及び甲4に記載されているか否かは,容易想到性の判断を左右しない。
また,原告は,引用発明の基本的技術思想を述べる記載から,レーザ装置が変更できると解することはできないと主張する。
しかしながら,引用発明は,ターゲットに酸化触媒を含める構成をとり,これを特徴点とする一方で,レーザ光源としては,「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置」と一般的なものでよいとしているから,引用発明は,レーザ光源としては,パルスを発生させ着火に適するならばどのようなものを用いてもよいと当業者に理解される。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
そのほかの原告の主張も,採用することができない。
ウ 小括
以上のとおりであるから,引用発明と周知技術及び周知事項1から本願補正発明が容易想到であるとした審決の認定判断には,誤りはない。 」
浜松ホトニクス
(知財高裁2部清水判事、平成28年12月26日)
(2017.1.11. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-11 12:21
| 特許裁判例
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