2017年 01月 18日
平成28年(行ケ)10087号 物品の表面装飾構造審決取消訴訟事件 |
◆眼鏡フレームなどの表面装飾構造の特許に関し、酸化チタン等が「金属材料」に含まれるようなクレームの記載ぶりになっていたことが明確性要件と言えるかが争点となった事件。明確性要件満たす。
【明確性、特36条6項2号、「金属材料」(導電性/延性)、「など」(例示/限定)、無効審判、審決取消訴訟、サポート要件、実施可能要件、進歩性】
「 本件特許発明では,「金属材料」は「金属光沢を有する」材料として特定されている。そして,ある物質が「金属」に当たるかは一義的に明確でなく(乙21~24),本件明細書には,「金属材料としては,…などの金属,…などの合金,酸化珪素,酸化チタン,ITO,DLC,窒化チタン,炭化チタンなど」(【0024】)というように,合金をはじめとして金属そのものでない物質も金属材料に含めて記載している。さらに,本件特許発明において課題解決のために必要とされる装飾模様(P)は,この「金属材料」を層着した「金属被覆層(2)」が呈する金属光沢と,剥離部(21)において表面の露出した基材(1)の外観との相違によって形成されるものであり,金属固有のほかの性質を利用したものではない。したがって,上記「金属材料」には,金属に当たるとはいい難い物質であっても,層着された状態で金属光沢を呈する材料であれば,これに含まれると解するのが相当である。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,①酸化チタンは,導電性を有しておらず,金属に特有の延性を有しないことから,「金属」には該当しないところ,請求項3及び同7は,酸化チタンを「金属材料」に含めている,②酸化チタンが「金属材料」に含まれるとしても,金属光沢を有しない,ことから本件特許は明確性に欠けると主張する。 しかし,酸化チタンが一般的に金属に当たらないとされているとしても,前記(1)のとおり,「金属材料」には層着された状態で金属光沢を呈する材料も含まれるのであるから,「金属光沢を有する金属材料」の意味内容が明確でないということはできない。そして,特開平7-2522号公報(甲22)には,「【0002】…酸化チタン粒子を支持体に固着させてなる酸化チタン膜は…光の反射率が高く,その反射色調が美しいシルバー調であることから…装飾用材料として…用いられるものである。」旨の記載があり,酸化チタン膜はシルバー調の金属光沢を呈する場合があるから,「酸化チタン」が,本件特許発明における「金属材料」に該当することは明らかであり,明確性に欠けるところはない。 」
浜野メッキ
(知財高裁4部高部判事、平成29年1月17日)
◆Memo:
・進歩性(主引例副引例の変更)、一回的解決。
「…当事者双方が,本件審決で従たる引用例とされた引用発明2を主たる引用例とし,本件審決で主たる引用例とされた引用発明1又は3との組合せによる容易想到性について,本件訴訟において審理判断することを認め,特許庁における審理判断を経由することを望んでおらず,その点についての当事者の主張立証が尽くされている本件においては,原告の前記主張について審理判断することは,紛争の一回的解決の観点からも,許されると解するのが相当である。」
(2017.1.18. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-18 18:47
| 特許裁判例
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