2017年 01月 26日
特許 平成27年(行ケ)10233号 透明不燃性シート事件 |
◆屈折率の測定方法をクレームに追加した訂正が、新規事項追加に当たるか否か等が争点となった事件。新規事項追加、訂正要件違反。
【無効審判、審決取消訴訟、訂正要件、新規事項追加、特許法126条5項、進歩性に関しても審決取消、引用発明の認定誤り、動機付けに乏しい、アッベ数、重量比】
(訂正の適否について)
「 12 本件訂正の適否について
本件訂正により,屈折率の測定方法に関して,…請求項2には「J1.前記硬化樹脂層の屈折率の値は,JIS K 7142のB法に従って測定される測定値であり,前記ガラス繊維織物を構成するガラス組成物の屈折率の値は前記JIS K 7142のB法におけるプラスチックをガラスに替えた方法に従って少なくとも小数第3位まで測定される測定値である,」との構成要件が,…が,それぞれ付加されている。
審決は,本件訂正のうち,屈折率の測定方法に関する訂正事項について,本件明細書,特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項といえるから,特許法134条の2第9項が準用する同法126条5項の規定に適合するとして,本件訂正を認める旨の判断をした。しかし,審決を取り消すに当たり,本件訂正を認めた審決の判断も,次に述べるとおり,誤りであることを付言する。
まず,樹脂の屈折率については,本件特許の特許請求の範囲(登録時のもの)の記載において,屈折率の測定方法が特定されていないところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,「硬化樹脂層の屈折率測定方法は,JIS K 7142の「プラスチックの屈折率測定方法」(Determination of the refractive index of plastics)に従う。具体的には,ガラス繊維織物が含まれていない硬化性樹脂のフィルムを,ガラス繊維織物を含む場合と同じ条件で作成し,アッベ屈折計を用いて測定する。」(段落【0038】)と記載されていることが認められる。そうすると,樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 7142」(甲203)に規定されたA法(板状またはフィルム状試験片に適用)とB法(粉末状,ペレット状,顆粒状サンプルに適用)のうち,アッベ屈折計を用いるとされるA法により測定されることが記載されていると認められる。したがって,樹脂組成物の屈折率の測定方法について,「JIS K 7142」のB法への訂正を認めた審決の判断は誤りである。
…略…
以上のとおり,本件明細書には,樹脂組成物の屈折率については,「JIS K 7142」に規定されたA法により測定されることが記載されていること,ガラス組成物の屈折率の測定方法については明確な記載がないものの,「ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」としては,繊維化する前のガラス組成物の屈折率が記載されており,その測定方法は前記のとおりVブロック法であると推認されることからすると,樹脂組成物の屈折率の測定方法については,「JIS K 7142」の「B法」を追加する本件訂正は新規事項の追加であり,ガラス組成物の屈折率の測定方法については,「JIS K 7142」を追加し,あるいはその「B法」を追加する本件訂正はいずれも新規事項の追加である。
したがって,樹脂組成物及びガラス組成物の屈折率の測定方法に関する上記各訂正事項については,本件明細書,特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内の事項ということはできず,特許法134条の2第9項が準用する同法126条5項の規定に適合しないものというべきであるから,本件訂正を認めた審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。 」
日東紡績、ユニチカ
(知財高裁1部設樂判事、平成29年1月18日)
◆関連案件 平成27年(行ケ)10234号
(2017.1.26. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-26 19:59
| 特許裁判例
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