2017年 01月 27日
特許 平成27年(行ケ)10010号 圧延熱処理用鋼板部品製造方法事件(進歩性) |
◆熱間圧延鋼板の製造方法に関する発明の進歩性が問題となった事件。阻害要因が認められ、進歩性肯定。
【無効審判、審決取消訴訟、進歩性、阻害要因、特許法29条2項、】
(容易想到性)
「…前記(2)のとおり,甲2ないし4には,溶融亜鉛めっきで被覆された鋼板を加熱することにより,当該めっき層を亜鉛-鉄金属間化合物とする技術が記載されているが,いずれにおいても,溶融亜鉛めっきに甲18発明のような「850℃~950℃の高温」を作用させて金属間化合物を形成することは記載されておらず,これを示唆する記載もない(例えば,甲3では,550℃乃至650℃まで加熱して合金化熱処理を施すことが記載されているにすぎない。)。
加えて,本件明細書の従来技術に係る「これまでは,金属表面に付着させた亜鉛被膜は,亜鉛の融点を上回る温度に加熱されると,溶融し流動して熱間成形用ツールの働きを妨害し,更に,急冷中に被膜が劣化すると考えられてきた。」(段落【0002】)との記載のほか,特開2010-90464号公報(甲35)における「熱間プレス成形時には鋼板はA3変態点以上(約900℃以上)の加熱を受ける。この場合,Znの融点は418℃,沸点は907℃であることから,亜鉛系めっき鋼板の場合は,鋼板上のZnめっきが蒸発することが予想され,その結果,鋼板素地が酸化されることになる。」との記載からすれば,本件特許の優先日当時の当業者の間では,溶融亜鉛めっきの被膜に900℃程度の高温を作用させることは不適切なこととして認識されていたものということができるから,鋼板に850℃~950℃の高温を作用させる甲18発明において,溶融亜鉛めっきの被覆材を採用することには,阻害要因があるものというべきである。
「アルミニウムをベースとする被覆材」に代えて甲2ないし4に示された溶融亜鉛めっきを採用した上で,「アルミニウムをベースとする被覆材を鉄合金に変態させる」ことに代えて亜鉛-鉄ベース合金化合物を形成させようとすることにはその動機づけが認められず,かえって阻害要因があるものといえるから,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲18発明及び甲2ないし4の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。 」
JAFスチール、アルセロールミタル
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年1月23日)
(2017.1.27. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-27 21:58
| 特許裁判例
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