2017年 01月 30日
意匠 平成28年(行ケ)10167号 箸の持ち方矯正具事件 |
◆箸の持ち方をトレーニングするための矯正具の意匠に関し、公知意匠との類似性が問題となった事件。非類似。
【無効審判、3条1項3号、審決取消訴訟、一体成型、部品、別体】
(類否判断)
「 2 取消事由3(類否判断の誤り)について
(1) 取消事由3-1(引用意匠1及び引用意匠2)
ア 類否について
意匠における美観とは,需要者による通常の使用状態を前提とするものであるところ,本件意匠は,意匠に係る物品の説明によれば,2本一対の箸にそれぞれ取り付けて使用するものである。そうであれば,本件意匠と対比すべきものも,2本一対の箸のそれぞれに設けられたものでなければならず,引用意匠1又は引用意匠2において,本件意匠と対比とすべき部分は,Aリング状部とBリング状部の双方である。
審決が認定するとおり(前記第2,3(2)ア,イ参照),Aリング状部は,「縦にリングの円環の上下が棒状と融合して,棒状にU字形状がR状に滑らかに貼り付くように形成され,リングの内径の円孔が棒状の中心軸の位置以上に食い込むように一体的に形成されている。」との形態と,Bリング状部は,「上下幅の細い,やや肉厚の円環状2つが棒状を挟んで相互に対向する位置(約180度開いて離れたベンゼン環の置換基のパラの位置)に,円筒状取付部分に円環状の外側が溶着して貼り付くように結合形成されている。2つの円環状は,細幅で肉厚の円環状(極扁平円管状)である。」との形態をそれぞれ有するものと認められる。一方,本件意匠は,前記第2,3(1)のとおり,構成部品A及び構成部品Bが,「共に取付部とリング部が一体成形されている。取付部は,通常の太さの箸を挿入する程度の内径のやや短い両端開口の肉薄の隅丸正方形角管状である。リング部は,やや細幅で若干肉厚の,指輪のような円環状(超扁平円筒状)である。円環状の外側が溶けて角管状に張り付くように形成されている。」との形態を有する。
このように,引用意匠1又は引用意匠2において,Aリング状部は箸本体と融合するよう一体的に形成され,Bリング状部は2つの円環が箸本体を挟んで対抗する位置に形成されているのに対し,本件意匠において,構成部品A及び構成部品Bは,いずれも,箸本体とは別体の角管状の取付部に1つの円環が結合する形状である。そうであれば,構成部品A又は構成部品Bのいずれもが,それらのリング部の数(1つであるか複数であるか)又は形状(箸本体と融合するよう形成されているか,そうでないか)において,Aリング状部又はBリング状部のいずれとも一見して異なる美観を生じさせており,本件意匠と,引用意匠1又は引用意匠2とがいずれも類似する意匠ではないことは明らかである。 」
ケイジェイシー、ナカノ
(知財高裁2部清水判事、平成29年1月24日)
(2017.1.30. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-30 21:01
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