2017年 02月 07日
意匠 平成28年(ワ)13870号 運搬台車事件 |
◆手押し棒の付いた台車(本件意匠)と台車単体(被告製品)との類似性や間接侵害が問題となった事件。非類似、間接侵害も成立せず。
【意匠権侵害訴訟、意匠法23条、間接侵害、意匠法38条、「のみ品」、取外し可能部品、完成品と部品、要部】
「争点 (本件意匠と被告意匠の類否)について
本件意匠の構成は別紙3意匠公報の【図面】のとおり,被告意匠の構成は別紙2被告意匠目録のとおりであり,本件意匠が台車本体の四隅に立設された4本の手押し棒(台車本体の短辺より長く,長辺より短い高さのもの)を有するのに対し,被告意匠には手押し棒に対応する部分がないため,両意匠は正面視,側面視等において明らかに形状を異にする。したがって,本件意匠と被告意匠は類似しないと判断すべきものである。
ただし,上記意匠公報に,意匠に係る物品の説明として手押し棒が着脱自在に立設される旨の記載があり,参考図として手押し棒を外した状態の斜視図が掲載されていることから,念のため,本件意匠のうち手押し棒以外の部分と被告意匠の類否について検討する。
・・・略・・・
オ 上記事実関係によれば,運搬台車を購入しようとする建設会社等の需要者及びこれを使用する作業員らは,斜め上方から台車本体の載置面を見るだけでなく,車輪の取付態様その他底面の構成を観察するものと解される。また,本件意匠に係る運搬台車又は被告製品の台車本体を斜め上方から見る際には,載置面の表面だけでなく,凹部から車輪取付板の形状を認識するということができる。なお,この点に関し,原告は,斜め上方からでは凹部の底にある車輪取付板は視認できない旨主張するが,その主張の裏付けとする写真(甲28)は,台車から約2m離れた地点において,約1mの高さから撮影したものであり,作業員らが通常の使用態様においてそのような位置のみから台車を観察するとは解し難いから,原告の主張は失当というべきである。
そうすると,本件意匠及び被告意匠においては,原告が要部であると主張する載置面の天板の形状等だけでなく,凹部上方から視認される車輪取付板の形状及び底面視における車輪の取付態様や台車の骨格等も,これに接した者の注意を引くと認められる。そして,前記ウのとおり,本件意匠と被告意匠はこれらの点が相違するのであり,これにより両意匠から需要者が受ける印象が異なるということができるから,前記ウの共通部分を踏まえても,全体として異なる美感を生じさせると解される。
以上によれば,手押し棒の有無にかかわらず,本件意匠と被告意匠が類似するとは認められないと判断するのが相当であって,原告の前記主張を採用することはできない。 」
(間接侵害)
「 2 争点 (間接侵害の成否)について
原告は,被告製品は四隅に手押し棒(単管パイプ)を立設する態様でのみ使用されるから,被告意匠が手押し棒の有無により本件意匠に類似しないとしても間接侵害(意匠法38条1号)が成立する旨主張する。
そこで判断するに,手押し棒を除いても本件意匠と被告意匠が類似するといえないことは前項で判示したとおりであるが,これに加え,証拠(乙12~15,1820,34)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品のような載置面が平板な台車は,四隅に手押し棒を立設する態様のほか,手押し棒を2本立設する態様,手押し棒を立設しない態様等でも建設現場における資材の運搬等の用に供されると認められる。
したがって,間接侵害をいう原告の主張も失当というべきである。 」
ジー・オー・ピー、ピカコーポレイション
(東京地裁46部長谷川裁判長、平成29年1月31日)
(2017.2.7. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-07 13:22
| 意匠
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