2017年 02月 07日
特許 平成28年(行ケ)10068号 空気入りタイヤ事件 |
◆タイヤ構造の発明の進歩性が問題となった事件。引例2を主引例に適用するのは容易であるが適用したとしても本願構成に想到しないとして、進歩性肯定。
【進歩性、特許法29条2項、技術分野の関連性、課題/解決手段、引用発明の認定、構成の想到性、拒絶査定不服審判、審決取消訴訟】
(進歩性)
「… したがって,引用発明に引用例2に記載された技術事項を適用することは,当業者にとって容易に想到し得たものということができる。
(4) 接地幅に対する切断端部の位置
ア 次に,引用例2に記載された技術事項を適用した引用発明は,外側ベルトの切断端部を,タイヤの赤道面から0.15~0.35Wの範囲に位置させるという本願発明の構成を備えるものになるかについて検討する。
イ 引用例2に記載された技術事項における「トレッドのショルダー部」の領域 引用例2には,「トレッドのショルダー部」が航空機タイヤのどの部分を具体的に指すのかについて記載はない。そして,「ショルダー」が「肩」の意味であることからすれば,「トレッドのショルダー部」とは,トレッドの肩のような形状の部分を指すと解するのが自然である。そして,引用例2の【図1】によれば,かかる形状の部分は,トレッドの中でもサイドウォールに近い部分,すなわち,トレッドの端部をいうものと解される。
また,引用例2には,「高速回転時のトレッド部の変形を抑制するための採用する0°バンドは,トレッド両端部における拘束力が少ないので,トレッドショルダー部の膨張変形に対する効果は少ない。」と記載され(【0026】),トレッド両端部における拘束力とトレッドのショルダー部の膨張変形に対する効果との間に直接の因果関係がある旨説明されており,引用例2における「トレッドのショルダー部」とは,0°バンドによる拘束力が少ない部分である,トレッドの端部と解するのが自然である。
さらに,航空機用タイヤに関する特開昭63-235106号公報(乙11)においては,タイヤのトレッドの端部がショルダー部とされており,それ以外の部分とは区別されている。すなわち,同公報には,タイヤのトレッドのショルダー部に2段溝状の縦溝を設けてなる航空機用タイヤに関する発明が記載されているところ(特許請求の範囲(1)),その実施例である航空機用タイヤ1(第1図)では,トレッド6に設けられた縦溝20,21,22のうちサイドウォール部4の最も近くにある縦溝22は(トレッド6の)ショルダー部を通って延びる直線溝であり,2段溝状をなすとされているのに対し,それ以外の縦溝20,21はトレッド6のクラウン部を通って延びる直線溝であり,略V字溝状をなす(3頁右下欄1行~14行)とされている。このように,航空機用タイヤのトレッド6において,そのサイドウォール部4に近い部分であるトレッド6の端部がショルダー部と呼ばれ,それ以外の部分であるクラウン部から区別されている。
したがって,引用例2に記載された技術事項における「トレッドのショルダー部」とは,トレッドの端部を意味するものと認められ,同技術事項は,ベルトプライの両端の折り返し部を,トレッドの端部に位置するように形成するものということができる。
ウ このように,引用例2に記載された技術事項は,ベルトプライの両端の折り返し部を,トレッドの端部に位置するように形成するものであって,引用発明に引用例2に記載された技術事項を適用しても,折り返し部が形成されるのは「トレッドゴム26」の端部である。したがって,引用発明に引用例2に記載された技術事項を適用しても,外側ベルトの切断端部を,タイヤの赤道面から0.15~0.35Wの範囲に位置させるという本願発明の構成には至らないというべきである。 」
ブリジストン
(知財高裁4部高部判事、平成29年2月7日)
(2017.2.7. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-07 18:37
| 特許裁判例
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