2017年 02月 28日
特許 平成28年(行ケ)10099号 円周分割パラボラアンテナ事件 |
◆円周に沿って分割した傘状のパラボラアンテナの進歩性が争点となった事件。引例図面の認定や発明の要旨認定等にも触れつつ、進歩性なしと判断。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/529/086529_hanrei.pdf
(引例図面からの発明の認定) 「…原告は,引用例1の第1図から実施例の寸法を推定し,その結果に基づいて実現可能性を論じているが,引用例1の第1図は,設計図とは異なり,その図面から厳密な寸法等が特定できるものではないし,引用発明は,引用例1の第1図の寸法のものに限定されるものでもないから,原告の主張は,その前提に誤りがあって,理由がない。 すなわち,特許法36条は,明細書とは異なり,図面は必要な場合に願書に添付すれば足りるものとし(同条2項),明細書の必要的記載事項である発明の詳細な説明(同条3項3号)については,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」が必要であるとし(同条4項1号),これを受けた特許法施行規則24条の2が,この「経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない」とする一方で,図面を願書に添付した場合については,明細書に図面の簡単な説明を記載すべきことを求めるとともに(特許法36条3項2号),特許法施行規則25条が,図面は様式30により作成すべきことを定めるにとどまり,明細書の発明の詳細な説明のような記載要件は定められていない。このように,引用例1の第1図のような願書に添付された図面は,発明の技術内容を理解しやすくするために,明細書の発明の詳細な説明の補助として使用されるものであり,明細書の発明の詳細な説明以上の詳細な記載が求められるものではないから,図面の記載も,当業者がその特許出願の発明の技術上の意義を理解し,その実施をすることができる程度に記載されていれば足りるものであり,設計図のような正確性が必要とされているものではない。以上の引用例1の第1図の性質に加え,引用例1には,前記(1)エのとり,「第1図における図上のこれらの,及びその他の寸法は,寸法や規模の制限を課するものではなく,建築上美術上の基準を満足する場所にひどく目立たずに集熱器-集光器を配置する容易性を例示するために示しているにすぎない。」と記載されているから,引用発明が,引用例1の第1図の寸法のものに限定されるものではないことは明らかである。 」
(本願発明の要旨認定) 「 (1) 特許法29条2項は,特許出願前に当業者が同条1項各号に掲げる発明に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明については,同項の規定にかかわらず,特許を受けることができない旨規定しているところ,本件のように,同条2項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならない。そして,同法36条5項が,願書に添付する特許請求の範囲には,請求項に区分して,各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない旨規定していることに照らすと,特許出願に係る発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲に記載がなく,明細書の発明の詳細な説明にのみ記載された技術的事項を発明の要旨として認定することはできない。 」 (知最高裁2部清水判事、平成29年2月23日)
【拒絶査定不服審判、審決取消訴訟、引用発明の認定、図面、寸法、本願発明の要旨認定、特許法29条2項】
(2017.2.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-28 19:22
| 特許裁判例
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