2017年 03月 05日
特許 平成28年(行ケ)10103号 掴線器事件 |
◆実用新案登録に基づく特許出願として特許になった発明に関し、進歩性の有無などが争点となった事件。動機付け無し/阻害要因あり、進歩性肯定。
【進歩性、阻害要因、動機付け、容易想到性、特§46の2、無効審判、審決取消訴訟、引例において所定構造ですでに問題が解決されている場合の変更の必要性、仮に変更した際の阻害要因】
(進歩性)
「…そうすると,引用発明は,前記1(2)アの本件発明の課題と共通する課題を,ハンドル32が,ピン33とブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し,ガ
イド36の形状と配置にあわせて,ハンドル32の上記屈曲と枢着接続部33の移動の円弧がよく調整されるようにした構成を採用することにより,既に解決しているということができるから,上記構成に加えて,あるいは,上記構成に換えて,ハンドル32を「捻った」部分を有するように構成する必要がない。
・・・略・・・
(ウ) したがって,そもそも,掴線器において,長レバーの移動により,その後端に設けられたリング部がケーブルなど他の部材と干渉するのを避けるために,長レバーを「捻った」部分を有するように構成することが,もとの出願日前に,当業者に周知慣用の技術であったとは認められないし,引用発明において,上記構成を備えるようにする動機付けもない。
(エ) むしろ,引用発明の構成に加えて,ハンドル32を「捻った」部分を有するように構成する場合には,引用発明では,目37がワイヤーに近接した位置となるように調整されているため,目37がワイヤーに接触するおそれがあり,目37がワイヤーに接触しないようにするには,目37とワイヤーとの距離を遠ざけるようにガイド36の形状と配置を変更することや,ハンドル32の段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧の再調整をすることが必要になるから,引用発明において,その構成に加えて,ハンドル32を「捻った」部分を有するように構成することには,阻害要因があるというべきである。
(オ) 以上によれば,引用発明において,周知例等に記載された事項に基づいて相違点に係る本件発明の構成を備えるようにすることが,容易に想到できたということはできない。 」
(実施可能要件)
「…物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用することができる程度の記載があるか否かによるというべきであって,所期の作用効果を奏することを裏付ける記載の有無いかんにより実施可能要件の充足性が直ちに左右されるものではない。 」
永木精機、HI-TOOL
(知財高裁4部高部判事、2017年2月28日)
(2017.3.5. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-05 18:35
| 特許裁判例
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