2017年 03月 16日
実用 平成28年(行ケ)10200号 スチームトラップ審決取消訴訟事件 |
◆機械構造系の考案に関する進歩性が争点となった事件。引例本来の目的に反するような改変であり、容易想到でないとして進歩性肯定。
【無効審判、進歩性、29条2項、実用新案、組合せ、阻害要因、目的に反することとなる改変、技術的意義の見出し難い改変、動機付け、周知技術であるが適用不可】
(容易想到性)
「…甲1考案のガスケットセパレーター30の技術的意義について検討してみると,これは,前記1(2)で認定のとおり,①開口46と開口48を有すること,②開口46には,本体16の開口36が合わさり,これらの開口がノズル40を受け,ノズル40が本体16に螺合することにより,ガスケットセパレーター30に密着し,キャップ32を取り外したときでも,ガスケットセパレーター30が留まるようにしたこと,③開口48には,本体16の開口38が合わさること,④キャップ32の遠い面70がガスケットセパレーター30を環状にシールする結果,ガスケットセパレーター30とキャップ32の内部に延びる中空部68との間に形成された内部空間42にある腐食性のコンデンセート/スチーム混合物が,キャップ32と受け部20のねじ壁34との接続部に漏れ出るのを防ぎ,ねじ部の腐食によるキャップ32の本体へのくっつきを緩和するものであること,⑤ノズル40が,ガスケットセパレーター30に圧力を加え,ガスケットセパレーター30が本体16の壁に密着し,ノズル40のショルダー60,ガスケットセパレーター30及び本体16の間がシールされる結果,コンデンセート又はスチームは,入口22から,ノズル40内の通路78を通ってのみ内部空間42に通り抜けることができること,との点にある。
このように,甲1考案のガスケットセパレーター30は,そのキャップ側の面とキャップ32の遠い面70とが結合してシールを形成し,また,ノズル40を受けるための開口46と通路74に通じる開口48とを有するものであるから,円盤状であって2つの開口を形成できることを必須の構成とするものである。
そうすると,甲1考案のガスケットセパレーター30をリング状のワッシャーとすることは,甲1考案の目的に反することであり,また,甲1考案のガスケットセパレーター30とスチームコンデンセートドレン装置14との間に傾斜面を設けるべき技術的理由も見い出すことができない。
(3) 周知技術の適用について
原告は,本件考案1のコンデンシングユニットワッシャー(30)のように,傾斜段部に対応した傾斜面を有するリング状のワッシャーは,テーパワッシャーとし
て周知の技術であり,構造,部位又は分野に制約されることなくシーリングに用いられるものであると主張するところ,甲3,13~18によると,そのような周知技術があること自体は認められる。なお,甲2,4は,上記周知技術があることを裏付ける証拠ということはできない。
しかしながら,甲1考案のガスケットセパレーター30は,上記(2)のとおりの技術的意義を有しているのであって,甲1考案に上記周知のテーパワッシャーを適用することは,甲1考案の目的に反することとなり,技術的理由の見出し難い改変を加えることであるから,当業者が試みることとはいえない。
そうすると,甲1考案に原告が主張する周知技術を適用して相違点に係る本件考案1の構成とすることは,当業者にきわめて容易であることとはいい得ないものである。 」
威唐企業有限公司
(知財高裁2部森判事、平成29年3月14日)
(2017.3.16. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-16 21:24
| 特許裁判例
|
Comments(0)