2017年 03月 21日
特許 平成28年(行ケ)10076号 接合金具審決取消訴訟事件 |
◆建設用の接合金具の発明の進歩性が問題となった事件。阻害要因が認められ、容易想到性否定。
【進歩性、阻害要因、無効審判、審決取消訴訟、機械構造系、技術的意義を損なう改変】
(阻害要因)
「しかし,引用発明に回動不能構成を採用することには,引用発明の技術的意義を損なうという阻害事由がある。
引用発明は,前記2(2)のとおり,従来の羽子板ボルトが有する,ボルト穴の位置がずれた場合に羽子板ボルトを適切に使用することができないという課題を解決するために,ボルト8 1 が摺動自在に係合する係合条孔9 2 を有する補強係合部10bを,軸ボルト4を中心として回動可能にするという手段を採用して,補強係合具10bが軸ボルト4を中心に回動し得る横架材16面上の扇形面積部分19内のいずれの部分にボルト穴17 1 が明けられても,補強係合具10bの係合条孔9 2 にボルト8 1 を挿入することができるようにしたものである。引用発明に相違点2に係る構成を採用し,引用発明の補強係合具10bを,軸ボルト4を中心として回動可能なものから回動不能なものに変更すると,補強係合具10bの係合条孔9 2 にボルト8 1 を挿入することができるのは,ボルト穴17 1 が係合条孔9 2 に沿った位置に明けられた場合に限定される。すなわち,引用発明は,横架材16面上の扇形面積部分19内のいずれの部分にボルト穴17 1 が明けられても,補強係合具10bの係合条孔9 2 にボルト8 1 を挿入することができるところに技術的意義があるにもかかわらず,回動不能構成を備えるようにすると,係合条孔9 2 に沿った位置以外の横架材16面上の扇形面積部分19内に明けられたボルト穴17 1 にはボルト81 を挿入することができなくなり,上記技術的意義が大きく損なわれることとなる。
そして,引用発明の技術的意義を損なってまで,引用発明の補強係合具10bを回動不能なものに変更し,係合条孔9 2 に沿った位置にボルト穴17 1 を明けない限りボルト8 1 を挿入することができないようにするべき理由は,本件の証拠上,認めることができない。
そうすると,引用発明の補強係合具10bを回動不能なものに変更することには,阻害要因があるというべきである。したがって,引用発明が相違点2に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。 」
栗山百造、住友林業、タナカ
(知財高裁2部森判事、平成29年3月14日)
(2017.3.21. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-21 21:07
| 特許裁判例
|
Comments(0)