2017年 03月 23日
特許 平成28年(行ケ)10159号 デマンドカレンダー事件(進歩性) |
◆電力デマンドをカレンダー方式で表示させた発明の進歩性が問題となった事件。容易想到、進歩性無し。
【進歩性、特許法29条2項、動機付け、目的共通性、審決取消訴訟】
(進歩性)
「 5 取消事由について
(1) 相違点1~4についての判断
引用発明は,信頼性が高く,かつ,多機能な遠隔管理システムを提供することができるようにする情報処理装置に関する,データ閲覧画面であり,ここで閲覧できるデータは,例えば30分間隔単位のデマンド値をグラフ化して表示したものである。一方,甲8発明は,エネルギー消費者に対して省エネルギーへの意識付けを行う省エネルギー支援システムに関する,前記認定のとおりのカレンダーのデータ閲覧画面であり,ここで閲覧できるデータは,例えば1時間単位の電力消費量である。
引用文献には,デマンド値の抑制が電気料金軽減につながることが開示されているから(【0040】),引用発明においては,デマンド値を監視することによってデマンド値を抑制するという目的があることが示唆されている。この目的は,電気使用量の抑制という点において,甲8発明の省エネルギーという目的と共通性を有している。
また,引用文献には,引用発明のデータ閲覧画面に,日次データのほか,週次データや月次データを表示させること(【0152】),異なる日付又は種類のデータを時間軸を重ね合わせて比較すること(【0156】~【0159】),今年のデマンド値と去年のデマンド値とを比較すること(【0193】)が開示されているから,引用発明においては,同じ時間の異なるデータを比較し,異なる日のデマンド値を比較することや,1週間内の日ごと,1か月内の日ごとのデータを一覧することも示唆されている。この点について,原告は,引用発明は,日ごとの比較を意図したアイデアであるとは考えない旨主張するが,引用発明における「月次データ」,「週次データ」は,日ごとの比較を意図したものであることは明らかであるから,原告の上記主張を採用することはできない。
さらに,データを比較する場合に,同種のデータを比較する手法は一般に広く採用されているから,同じ時間の異なるデータを比較し,異なる日のデマンド値を比較することや,1週間内の日ごと,1か月内の日ごとのデータを一覧することが示唆されている引用発明から,異なる日の同じ時間のデマンド値を比較することを容易に想起することができるというべきである。
そして,1か月間の日次データを一覧させようとする場合に,各週の日次データを同一曜日が同一列になるように並べて1か月間のデータを一覧できるようにすることは,一般に広く用いられている曜日と週を縦横の軸とした月次カレンダーの形式と合致するものである。
そうすると,引用発明に,異なる日のデマンド値を,時間,日で比較して,デマンド値を抑制するため,電力消費量を抑制するために,同じ曜日の同じ時間を縦に合わせ,同じ週の時間単位の電力消費量を横に合わせ,同一曜日が同一列となるようにマトリクス状に1か月単位で一覧して比較した,甲8発明を適用する動機付けがあるというべきである。
したがって,引用発明に甲8発明の構成を採用して,相違点1~4に係る本願発明の構成に至ることは,本願出願日当時の当業者にとって,容易想到であるといえる。 」
(知財高裁2部森判事、平成29年3月21日)
(2017.3.23. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-23 21:12
| 特許裁判例
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