2017年 03月 29日
特許 平成28年(行ケ)10207号 耳かけダイナミックバランスドスマホ事件(進歩性) |
◆ディスプレイやカメラを搭載したアイウェアの発明の進歩性が問題となった事件。進歩性なし。
【動機付け、技術分野、拒絶査定、審決取消訴訟、特許法29条2項】
「ウ 相違点の容易想到性
(ア) 引用例2に記載された技術事項のバッテリ(本願発明の「バッテリー」に相当する。)は,引用例2の【0016】及び【図2.0】の記載からみて,つるの耳の後方に配置されているところ,バッテリからディスプレイ等へ電気供給することは普通のことであるから,上記技術事項は,本願発明の「配線」に相当する構成を有し,上記「配線」は,つるの耳の後方に配置されたものであると当業者は理解する。したがって,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用すると,「つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置」する構成に至る。なお,仮に,引用例2に記載された技術事項において,バッテリからディスプレイ等への電気の供給が「配線」を有さない無線接続によるものだとしても,これを有線接続とし,電気供給のための「配線」を設け,上記「配線」をつるの耳の後方に配置するようにすることは,当業者が適宜行い得たことであり,「つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置」する構成に容易に想到できたということがでる。
(イ) また,引用例2に記載された技術事項では,ユーザはディスプレイを覗くことでディスプレイに表示された情報を見ることができるようになっているから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用すると,「前方にディスプレイを設け」た構成に至る。
(ウ) そして,引用例2に記載された技術事項では,ディスプレイ機能キーを有するPCCSUがアイウェアとは別体となっているものの,引用例2には,「…実施例は,PCCSU機能をアイウェア内に電気的に結線するか,一体化することを含む」(【0021】)と記載されている。そして,上記記載に従い,ディスプレイ機能キーを有するPCCSUをアイウェア内に一体化した場合,ディスプレイ機能キーを有するPCCSU,マイクロプロセッサ及びディスプレイは,全体として,本願発明の「PC」に相当するものである。そして,「本願発明は,耳の位置を支点として,その後方のバッテリー11や電子回路12の重さW1と,その前方のディスプレイ16やカメラ18の重さW2とのバランスをとるもの」であるとの原告の主張によれば,引用発明のメガネも,本願発明と同じく,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,前方の重さをW2として顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをとり,鼻などの顔部に荷重がかからないものであるから,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用すると,「耳かけダイナミックバランスドPC」の構成に至る。なお,仮に本願発明の「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」との記載が,「耳かけダイナミックバランスドスマホ及びPC」の趣旨であったとしても,引用例2に記載された技術事項は,マイクロフォン,スピーカ及びトランシーバを有するから,「スマホ」のような通話機能をもたせるようにし,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用して「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」の構成に容易に想到できたということができる。
エ 以上によれば,引用発明において,引用例2に記載された技術事項を適用し,相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到できたことである。 」
ドクター中松創研
(知財高裁4部高部判事、平成29年3月28日)
(2017.3.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-29 20:06
| 特許裁判例
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