2017年 04月 03日
著作 平成28年(ワ)16088号 あぶらとり紙図柄事件 |
◆あぶらとり紙の図柄について著作権侵害が問題となった事件。原告は著作者Bから譲り受けた著作権に基づき権利行使をしたが、侵害不成立。
【著作物性、複製、著作者、著作権譲渡、筆跡鑑定、権利行使主体、侵害訴訟】
「 そこで判断するに,上記①について,上記「ふるや紙」と「ふろや紙」等の文字は一見類似するといい得るものの,本件著作物の作成者以外の者が本件著作物をまねて後者を作成したとみる余地があり,類似すること自体は本件著作物の作成者が B であることの根拠となるものでない。B による再現についてもこれと同様である。また,本件著作物と「かほり紙」及び「ゆとり紙」を子細に比較すると,「紙」の文字の「氏」部の2画目及び4画目の各下端のはねの形状及び方向といった点が相違しており,表現上の特徴的部分が一致するということもできない。さらに,原告の依頼による筆跡鑑定(甲24)は,毛筆等の筆記具で記載された原画ではなく,単色で印刷されたデザイン画を比較したにとどまり,筆致等は不明であること,デザインの過程で加筆修正が施され得ることを考慮すると,その鑑定結果により本件著作物の作成者を判断することは相当でない。
また,上記②について,証拠(乙1,2)及び弁論の全趣旨によれば,昭和40年代以前から,金の板を和紙に挟んで槌で打って延ばすという伝統的な金箔の製法に用いられる和紙につき,使用された後に箔打ちの用に供し得なくなったものが「ふるや」と呼ばれており,皮脂を取るための化粧紙に転用されていたことが認められる。そうすると,紙の一種である「ふるや」に「紙」を加えた「ふるや紙」という名称を A が新たに考案したと認めることはできない。
このほか,原告は,前記のとおり,B にデザインの作成能力があること, 本件著作物が広く知られた原告の商標であることなどを主張するが,いずれも原告が著作権者であることの根拠となるとは解し難い。
⑵ これに加え,本件においては,以下のとおり,原告が本件著作物の著作権者であることと相いれない事情があると認められる。
ア 原告は,原告商品の製造を委託するに当たり B が作成した原画を被告に交付した旨主張するが,そうであるとすれば,原告があぶらとり紙の名称を変更した時点ないし被告との取引を中止した時点で,被告に対して上記原画の返還を求め,あるいはその保管状況を問い合わせるなどの行動をとるべきものと解される。ところが,本件の証拠上,原告がそのような行動をとったことはうかがわれず,B が作成したという原画の存在自体定かでないといわざるを得ない。
なお,被告商品の原画に関しては,被告が「ふるや紙」の文字は書家の書いた色紙(乙10)によるものであると主張するのに対し,原告は,色紙の作成者に関する被告の主張が変遷し,作成時期も不明であるので,被告の主張は失当であるとする。被告の主張が変遷したことは原告指摘のとおりであるが,本件著作物が B の作成であると認められない以上,この点は本件の結論に影響するものでない。 」
鳳凰堂、箔一
(東京地裁46部長谷川裁判長、平成29年3月23日)
(2017.4.3. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-04-03 20:38
| 著作権法
|
Comments(0)