2017年 04月 04日
特許 平成28年(行ケ)10067号 塗料用容器事件(方法的記載) |
◆拒絶査定不服審判において物のクレームの方法的記載に関しPBPクレームに該当するか等(特許法36条6項2号)の判断をしなかったことが手続の違法となるかが争点となった事件。違法でない。
【プロダクトバイプロセス、PBP、方法的記載、拒絶査定不服審判、独立特許要件(進歩性/明確性)、最高裁判決以後、進歩性、発明の要旨認定】
(手続きの違法性について)
「2 取消事由1(審判における手続の違法)について
原告は,本件請求項1の「前記内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる内容器」との記載から,同請求項はPBPクレームに該当するとした上で,本件の審判手続について,①本件請求項1がPBPクレームであるか否かの判断を審決で示さず,PBPクレームにおいて「発明が明確である」といえるための要件である「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在する」か否かについての審理を尽くしていない点,②PBPクレームを製造方法のクレームに変更するための補正の機会を原告に与えなかった点において,手続の違法がある旨主張する。
そこで検討するに,本件請求項1の「前記内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる」との記載は,原告が本件補正において付加したものであるところ,本件審決は,当該補正を,本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「内容器」について製造方法により特定される状態に限定するものととらえた上で,PBPクレームとしての明確性要件違反の有無については検討・判断することなく,これとは別の独立特許要件である進歩性の有無について検討した結果,本願補正発明は引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,進歩性欠如を理由として独立特許要件を充足しないとの判断をしたものである。
このように,本件審決は,本願補正発明の要旨について,原告による本件補正の内容どおりに,「内容器」を「金型で樹脂をプレスする」という製造方法により特定される状態のものととらえた上で,そのような発明について進歩性の欠如が認められ,独立特許要件を充足しないと結論付けたものであり,これとは別の独立特許要件である明確性要件を充足するか否か,すなわち,本件請求項1がPBPクレームであるか否か,また,PBPクレームである場合に必要となる「発明が明確である」といえるための前記要件を満たすか否かについては検討・判断をするまでもなく上記の結論に至ったことから,あえて当該検討・判断をしなかったものにすぎない。このような本件審決の判断内容からすれば,本件の審判手続に審理不尽の違法があるなどといえないことは明らかである。 」
タイホウ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年3月27日)
(2017.4.4. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-04-04 21:04
| 特許裁判例
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