2017年 04月 25日
特許 平成27年(行ケ)10256号 逆流防止装置事件(進歩性) |
◆給湯器と浴槽の間に配置される逆流防止装置の進歩性が争点となった事件。進歩性あり。
【無効審判、審決取消訴訟、進歩性、29条2項、機械構造系、動作原理/仕組みの異なる構成の組合せ、動機付け、新しい課題の解決、開示示唆、新規性、実験報告書】
(相違点1についての容易想到性)
「… 甲1発明において,縁切り装置23を「逆止弁24」の後に配置することを示唆するものであると認められる。しかしながら,甲1文献の上記記載は,縁切り装置23の前(縁切り装置23と電磁弁22との間)に2個の逆止弁を連続して配置することを示唆するにとどまるものであって,縁切り装置23の前後に逆止弁を1個ずつ配置すること(本件訂正発明の「第1の逆止弁」及び「第2の逆止弁」に相当する位置に逆止弁を配置すること)までを示唆するものということはできない。
また,前記のとおり,本件訂正発明は,電磁弁と大気開放弁との間に第2の逆止弁を設け,同逆止弁が,通常の逆止弁の機能に加え,水密不良の状態にあるときも,オリフィスとしての機能により,オーバーフロー口から吸い込まれる大気の流量を減少させることによって,上水道の圧力低下に応動して大気開放弁を大気開放した場合に,放出される水の一部及び吸い込まれた大気が逆流する事態が生じるという本件特許の出願前に当業者に知られていなかった前記1(2)の課題を解決するものであるところ,甲1文献において,第2の逆止弁の構成を想到する動機付けとなる記載や示唆があるとは認められない。
そして,甲1発明に係る逆流防止装置の「給水源の水圧と縁切りしたい水である逆流水の水圧との圧力バランスにより前記逆流水を排水し縁切りする縁切り装置」の前後に逆止弁を1個ずつ配置することが周知技術又は技術常識であると認めることはできないから,甲1発明において,相違点1に係る本件訂正発明の構成を備えるようにすることが,周知技術の単なる適用であるなどということはできない。
そうすると,相違点1に係る本件訂正発明の構成は,甲1発明に基づいて容易に想到し得るものであるということはできない。 」
(相違点2についての容易想到性)
「…しかしながら,甲2発明に係る逆流防止装置において,パイロット室(26)を上流側水路(5a)に連通させる代わりに給水源に接続することが周知技術であることを認めるに足りる証拠はない。
また,甲2発明は,水電磁弁(7)を閉じているときに弁(23)を開いて縁切りし,さらに断水時において弁(23)を開き逆流をドレン路に排出することにより逆流防止を確実なものとすることを目的としたものであり,甲2発明の遮断装置(16)は,パイロット室への流路を含めて一体の装置として形成されているものであると認められるから,甲2発明を上水道の圧力が低下したときだけ弁(23)が開閉動作し縁切りが行われるものに変更することは,上水道の圧力低下の有無にかかわらず縁切りが行われるものであるという甲2発明の主要な部分に反するものといえる。甲2発明において,弁(23)が上水道の圧力低下がない状態においても水電磁弁(7)を閉じるたびに開き,水電磁弁(7)を開くたびに閉じるものであることについて,当業者において,何らかの不都合(解決すべき課題)があると認識されていたと認めるに足りる証拠もないから,当業者にとって,甲2発明の弁(23)を,上水道の圧力低下がない状態においては閉じた状態を保つものに変更する動機付けは認め難い。
したがって,相違点2に係る本件訂正発明の構成は,甲2発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。
また,甲1発明と甲2発明とは縁切り動作等の仕組が異なるものであることは前記認定のとおりであり,甲2発明の構成の一部を,甲1発明の構成の一部と置き換えることについての動機付けは乏しい。
したがって,相違点2に係る本件訂正発明の構成は,甲2発明及び甲1発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 」
ノーリツ、テージーケー
(知財高裁1部清水判事、平成29年4月12日)
(2017.4.25. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-04-25 21:43
| 特許裁判例
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