2017年 05月 09日
特許 平成28年(行ケ)10100号 ゴルフボール事件(進歩性) |
◆ゴルフボールの発明に関し、阻害要因あるとして進歩性が認められた事件。
【容易想到性、特許法29条2項、阻害要因、無効審判、審決取消訴訟、数値限定】
(進歩性)
「… しかしながら,甲3,4,8及び9に開示された「上縁辺部に丸みをつける技術」(更に,甲8及び9に開示された「丸みづけられた上縁辺部の曲率半径を約0.020~0.080インチ(0.508~2.032mm)の範囲とする技術」)は,いずれもゴルフボールの表面にディンプルとランドが存在し,ランドの両端にディンプルに続く端縁である上縁辺部がそれぞれ存在することを前提に,これらの上縁辺部に丸みをつけるという技術であるのに対し,甲10,16及び17に開示された「ランドの幅をゼロにする技術」は,ゴルフボール表面のランドの領域をゼロにする技術であり,必然的にランドの両端の上縁辺部をなくすこととなるものであるから,甲10,16及び17に開示された技術は,ランドの両端に上縁辺部が存在することを前提とする甲3,4,8及び9に開示の技術とは相容れないものというほかない。すなわち,仮に,甲1発明に,甲3,4,8及び9の記載事項を適用し,甲1発明の非窪み部分の両端にある上縁辺部に丸みをつけ,更に丸みづけられた当該上縁辺部の曲率半径を約0.020~0.080インチ(0.508~2.032mm)の範囲とすることができたとしても,これに対して更に甲10,16及び17に開示された「ランドの幅をゼロにする技術」を適用し,非窪み部分の両端の上縁辺部をなくすように構成することは,そもそも甲1発明に甲3,4,8及び9の記載事項を適用して当該上縁辺部に上記曲率半径を有する丸みをつけたことの意味を失わせることとなるものといえる。
してみると,甲1発明に,甲3,4,8及び9に開示された「上縁辺部に丸みをつける技術」等を適用することまでは可能であるとしても,これに対して更に甲10,16及び17に開示された「ランドの幅をゼロにする技術」まで適用することには阻害要因があるというべきであって,当業者が容易に想到し得たこととはいえないから,原告の上記主張には理由がない。
(4) まとめ
以上の次第であるから,原告主張の取消事由1は理由がなく,本件発明1について,甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないとした本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。」
キャラウェイゴルフ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年2月8日)
(2017.5.9. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-05-09 22:23
| 特許裁判例
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