2017年 06月 01日
特許 平成28年(行ケ)10190号 印刷物事件(進歩性) |
◆ダイレクトメールなどの印刷物の構造に関する特許に関し、進歩性が問題となった事件。引用発明の組合せの動機付けがなく、進歩性肯定。
【無効審判、審決取消訴訟、機械構造系、進歩性、特§29②、動機付け、構造の相違、目的の相違、36条、明確性、サポート要件】
(容易想到性)
「イ 甲5発明を組み合わせる動機付け
(ア) 構成の相違
引用発明1は,シート状基材に情報記録体を形成し,それを容易に分離可能に形成したことを特徴とする。そして,情報記録体が形成されたシート状基材の面は,別のシート状基材等で剥離可能に被覆されている。
一方,甲5発明は,折り畳まれるパネル用材と,カードが一体に作られるカード担体とは別個のものである。また,“C”字形状に巻き折りをした上部パネル及び下部パネルは,中間パネルに接着されており,カードないしカード担体に貼着されるものでもない。
このように,引用発明1と甲5発明は,その構成が大きく相違するものである。
(イ) 目的の相違
引用発明1は,情報記録体をシート状基材に形成し,そのままで受取人に配達することを可能にすることにより,封筒代等のコストを削減し,また,封入等の手間を省くことを目的とするものである。
一方,甲5発明は,カードを,特に販売場所において,パッケージに取り付けて展示するために,新規の改良されたカード用組み立て式パッケージを提供することを目的とするものである。カードを配達するに当たってのコストの削減とは無関係な発明であり,また,カードないしカード担体をパッケージに取り付けることが前提となっており,カード等をパッケージに取り付ける手間を省くことを目的とするものでもない。
このように,引用発明1と甲5発明は,その目的も大きく相違するものである。
(ウ) 以上のとおり,引用発明1と甲5発明は,その構成も目的も大きく相違することからすれば,引用発明1に,甲5発明を組み合わせる動機付けはないというべきである。
(エ) 原告の主張について
a 原告は,甲5発明には,シートを打ち抜いてカードを形成し,カードを保護しつつ移送し,受取人がこれを取り外すという課題が内在するとして,引用発明1と課題が共通する旨主張する。
しかし,そもそも,甲5文献には,図16,16A,16B及び前記ア(ウ)のとおり,“C”字形状に巻き折りした形態において,シートを打ち抜いてカードを形成するような構成は開示されていない。また,甲5文献には,「カードは,ウェブ素材を打ち抜いてパッケージの開封後にウェブ素材から外されるようにもできる。
…図13,14の実施形態のように窓片20の接着剤が塗布された面に剥離可能に接着されている。」と記載されるのみであり(4欄59行~65行),打ち抜き方は不明であって,その目的についても記載はない。そうすると,甲5文献から,原告主張の上記課題を認識することはできない。
また,仮に,甲5発明によって,“C”字形状に巻き折りした形態において,カードがパッケージに保護されつつ移送されることになったとしても,それによって,封筒代等の削減や封入の手間を省くという引用発明1の課題を達成することにはならない。
したがって,甲5発明と,引用発明1の課題は関係がなく,原告の前記主張は採用できない。 」
大日本印刷、ウィル・コーポレーション
(知財高裁4部高部判事、平成29年5月30日)
(2017.6.1. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-06-01 20:27
| 特許裁判例
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