2017年 06月 06日
商標 平成28年(行ケ)10089号 FINESSENCE事件(類否) |
◆図柄付きの「FINESSENCE」と文字商標「FINESSENCE」との類否が問題となった事件。類似する、8条1項違反。
【結合商標、類否判断、取引実情、一般的恒常的な取引実情、無効理由、商標法8条1項、審決取消訴訟】
(分離抽出について)
「 (1) 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」というアルファベット10文字を横文字にして成る文字部分(本件文字部分)と,アヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(本件図形)を,上下二段に組み合わせて構成されるものであるところ,その構成態様からして,各構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。また,上記のとおり,本件文字部分はアルファベット10文字を横書きにして成るのに対し,本件図形部分の横幅は本件文字の3文字分(左から2文字目ないし4文字目)程度しかなく,その大きさの比からして,本件文字部分が本件商標の中心的構成部分に当たることは明らかである。加えて,原告も認めるとおり,本件文字部分は,それ自体造語であって一般的な用語ではないから,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であると認められる。
そうすると,本件商標のうち本件文字部分を要部として抽出し,同部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきであり,この点において,本件審決の認定に誤りがあるとは認められない。 」
(類否判断で考慮される”取引の実情”とは)
「 原告は,本件審決の認定が誤りである理由として,本件商標の構成及び外観の一体性や,本件商標から生じる観念の一体性について種々主張するが,
上記(2)で説示したところに照らし,いずれも採用できない。
また,原告は,取引の実情として,本件アロマ製品の包装において,本件商標を構成する本件文字と本件図形が常に一体として使用されているとの事情(市場における一体的な使用)も考慮すべきである旨主張するが,そもそも,商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品全体についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではない(最一小判昭和49年4月25日審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)。したがって,かかる原告の主張も失当である。 」
BERNARD FRANCE SERVICE、ラボラトアレ フィニサンス ソシエテ パル アクシオン シンプリフィエ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年5月15日)
(2017.6.6. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-06-06 12:09
| 商標
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