2017年 06月 06日
特許 平成28年(行ケ)10120号 ワイパモータ事件(進歩性) |
◆車両ワイパ用モータのの発明に関し、進歩性の有無が争点となった事件。進歩性有り、審決取消。
【容易想到性、特許法29条2項、技術常識、引用発明の内在する課題、無効審判、審決取消訴訟】
(相違点3に関する容易想到性)
「 (ア) 直流モータが回転力を維持し続けるには,整流子とブラシによって得られる整流作用が不可欠であることは,直流モータの原理から自明のことであるから,直流モータにおいて,ブラシ整流作用を良好に保つことは,当然に達成しなければならない課題である。したがって,当該課題は,同じく直流モータである甲1発明においても,当然に内在する課題ということができる。
しかるところ,前記ア(ウ)aのとおり,+電位に接続される2個のブラシ及び-電位に接続される2個のブラシを備える4極重巻モータにおいて,ブラシ整流作用の悪化等の問題点を解決するために均圧線を設ける甲2従来技術が技術常識であることからすれば,同じく同電位に接続された2個のブラシを複数組備える4極重巻モータであり,ブラシの整流作用を良好に保つという課題が内在する甲1発明においても,甲2従来技術と同様の均圧線を設けることは,当業者が当然に想到し得ることといえる。
なお,甲2の記載では,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続するものとされ,本件発明1の均圧部材のように「等電位となるべきコイル間を接続する」ことが明記されてはいない。しかし,整流子とコイルが接続されている以上,同電位となるべき整流子間を均圧線で接続することは,電気的にみて,「等電位となるべきコイル間を均圧線で接続する」ことにほかならないものといえる。
以上によれば,甲1発明において相違点3に係る本件発明1の構成(コイルのうち等電位となるべきコイル間を接続する均圧部材を備えること)とすることは,甲1発明に甲2の開示事項(甲2従来技術)を適用することにより当業者が容易に想到し得たことと認められる。 」
アスモ、ミツバ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年5月17日)
(2017.6.6. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-06-06 12:50
| 特許裁判例
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