2017年 06月 10日
特許 平成28年(行ケ)10229号 生海苔の共回り防止装置事件(進歩性) |
◆生海苔の共回り防止装置の発明に関し、進歩性の有無が争点となった事件。進歩性有り。
【機械構造系、特許法29条2項、無効審判、審決取消訴訟、動機付け、組み合わせ、課題解決手段の相違、いかに適用するか、有利な効果】
(容易想到性)
「…このように,甲4発明は,回転板方式を前提とする発明である点で本件発明1,3及び4と共通するものであるが,甲4自体には,本件発明1,3及び4の課題である「共回り」についての記載はない。なお,甲4発明を利用した装置に係る「海苔タイムス」掲載の広告(甲9~14)には,「シンワ式 原草海苔異物除去洗浄機 CFW-36型」との記載と共に,「特長」欄に「⑦目づまり防止付。」との記載があるが,その目詰まりの原因をうかがわせる記載はなく,回転板方式を採用した異物分離除去装置において共回りの現象を生じることは記載されていない。 そして,回転板方式による異物分離除去装置に「共回り」の課題が存在することが技術常識であったと認めるに足りる証拠もないから,甲4文献に接した当業者において,共回りの課題が存在することを認識し得たとは認められない。
(イ) また,甲4発明は,本件発明1,3及び4と同じく回転板方式を前提とするものであるのに対し,甲2,3及び16文献にそれぞれ記載された異物分離除去装置(なお,各文献記載の技術的事項は,本件審決の認定するとおりといってよい。)は,回転板方式とは異なる分離方式を採用するものである。
このように,甲4発明と甲2,3及び16文献に各記載の技術的事項とは,前提とする異物分離除去の解決方式に係る技術的思想が異なるため,甲4文献に接した当業者において,甲2,3及び16文献に各記載の技術的事項を甲4発明に適用しようとする動機付けが生じるとはいえず,また,これらの技術的事項を甲4発明にいかに適用するのかを想起することも困難であるから,仮にこれらを適用しようとしたとしても,本件発明1,3及び4の構成を想到することはできないと見られる。
そうすると,甲4発明において,本件発明1,3及び4に係る相違点A~Cの構成を得ることは,当業者にとって容易であるということはできない。
(ウ) さらに,本件発明1,3及び4は,「防止手段」を突起・板体の突起物とすることで,「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)」(本件明細書段落【0020】)ようにしたという顕著な作用効果を奏するものである。
オ 小括
以上より,本件発明1,3及び4は,甲4発明並びに甲2,甲3及び甲16文献に各記載の技術的事項等に基づき,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 」
渡邊機開工業、ニチモウ、フルタ電機
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年5月17日)
◆Memo:
・引例中に課題の認識があるか?
・課題解決方式(技術的思想)は共通か?
・どのように適用する(組み合わせる)かが明確か?
・顕著な作用効果は?
(2017.6.10. 弁理士 鈴木 学)
by manabu16779
| 2017-06-10 08:55
| 特許裁判例
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