2017年 06月 21日
特許 平成28年(ネ)10083号 治療用マーカー事件(進歩性) |
◆ 放射線治療の際の目印などに用いられる医療用マーカの特許権侵害訴訟で、進歩性の有無が争点となった事件。進歩性無し、原判決取消し。
【進歩性、特許法29条2項、侵害訴訟、無効理由】
(相違点についての判断)
「 そうすると,乙1発明に接した当業者が,これに乙9発明を組み合わせて,治療用マーカーとして用い,位置決めのための着色印刷インキ層に形成されるマークと同一のマークを表面に印刷すること,すなわち,①乙9発明では,台紙の第1面に第1インク層の位置決めを正確にするための指標としての第2インク層が配置されているから,乙1発明の剥離性シートの表面に治療用の目印となるマークの位置決めのためのマークを印刷する構成を採用し(相違点1),②乙9発明では,第2インク層のパターンは第1インク層と同一であるから,乙1発明の剥離性シートの表面に印刷するマークを着色印刷インキ層に形成されるマークと同一にする構成を採用し(相違点2),③乙9発明は,皮膚表面に放射線治療用のマーキングを付ける装置であるから,乙1発明の転写シールを治療用マーカーとして用いること(相違点4)を容易に想到することができたというべきである。
イ 相違点3について
入れ墨転写シールを含む各種の転写シールには,従来から,水転写タイプ,有機溶剤転写タイプ,粘着転写タイプ等のものが知られているから(乙1公報【0002】,乙3公報【0002】~【0004】),皮膚用の転写シールを水転写タイプとすることは,周知技術であると認められる。また,乙1発明の転写シールには,透明弾性層,着色印刷インキ層,粘着剤層に,1以上の空気孔を設けてもよいのであるから(乙1公報【請求項3】【0018】),粘着剤層の粘着剤を溶解して基台紙を剥離するために水転写の方法を採用することも技術的に可能であり,これを妨げる特段の事情も認められない。
したがって,乙1発明に相違点3に係る構成を採用することは容易想到であると認められる。
(8) 以上より,乙1発明に乙9発明及び周知技術を適用して,本件発明とすることは,容易想到である。したがって,本件特許権は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 」
東京オリジナル・カラー・シール・センター、中部メディカル、ヤスイペイント工芸所
(知財高裁2部森判事、平成29年5月18日)
(2017.6.21. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-06-21 21:50
| 特許裁判例
|
Comments(0)