2017年 06月 27日
特許 平成28年(行ケ)10071号 機密管理装置事件(進歩性) |
◆ 機密事項含むアプリケーションの送信制御に関する発明の進歩性が問題となった事件。一致点・相違点の認定誤り、審決取消。
【進歩性、特許法29条2項、一致点・相違点の認定誤り、拒絶査定不服審判、審決取消訴訟】
(一致点・相違点)
「…以上より,本願発明は,「当該アプリケーションが,前記機密識別子記憶部で記憶されている機密識別子で識別されるアプリケーションであり,送信先がローカル以外である場合に,当該フックしたシステムコールを破棄することによって当該送信を阻止する一方,当該アプリケーションが,機密識別子で識別されるアプリケーションでないか,又は,送信先がローカルである場合に,当該フックしたシステムコールを開放することによって当該送信を実行する」ものであると解される。このように解することは,本願発明の課題及び効果(前記1(3)イ,エ)とも整合する。
そうすると,本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定に当たっては,ファイル送信の阻止の条件とともにファイル送信を阻止しない条件についても対象とすべきところ,本件審決は,ファイル送信の阻止の条件を相違点1として認定するにとどまり,ファイル送信を阻止しない条件に関する対比及び認定が欠落しているというべきである。
そして,引用発明においてファイル送信を阻止しない条件は,入力元のアプリケーションの識別子の安全性よりも出力先の記憶領域の安全性の方が低くないことであり,この点は,本願発明のファイル送信を阻止しない条件とは相違する。
以上より,本願発明と引用発明とは,本願発明においては,「当該アプリケーションが,機密識別子で識別されるアプリケーションでないか,又は,送信先がローカルである場合に,当該フックしたシステムコールを開放することによって当該送信を実行する」のに対し,引用発明においては,「入力元のアプリケーションの識別子の安全性よりも出力先の記憶領域の安全性の方が低くない場合に,ファイル送信を実行する」点でも相違すると見るのが適当である(これと相違点1とを合わせると,相違点Cとなる。以下では,正しくは相違点1ではなく相違点Cが認定されるべきであったものとして論ずる。)。このような相違点Cを看過した点で,本件審決における本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定は誤りがある。 」
エンカレッジ・テクノロジ
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年6月14日)
(2017.6.27. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-06-27 12:30
| 特許裁判例
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