2017年 07月 05日
特許 平成28年(行ケ)10224号 位置検知装置事件(進歩性) |
◆位置検出装置に関する発明の進歩性が問題となった事件。動機付け無し、進歩性肯定。
【無効審判、審決取消訴訟、進歩性、特許法29条2項、機械構造系、具体的構造、変更の動機付け、阻害要因】
(相違点2の判断)
「…甲1発明において,相違点2に係る本件発明1の構成を備えるようにすること,すなわち油室(孔延長部33)の油圧によって,スプール弁29を下方に進出させた状態に保持することを,当業者が容易に想到することができたか否かについて判断する。
甲1文献には,「上記の弁手段が,アクチュエータの作動流体の圧力に対してバランスされる」(前記(1)ア③),「この動作不良を防止するには,流体圧力源を孔延長部33へ接続する通路を介して,スプール弁の反対側の端部に均圧流体を供給すればよい」(前記(1)ア⑨),「弁スプールの両端部の空間同士を連通させる軸孔路48を設けて,その弁スプールをバランスさせる流体圧力を上記の両端面に作用させ」(前記(1)ア⑨)と記載され,甲1発明においては,孔延長部33に導入された油圧によってスプール弁29の上端に作用する押下力が,スプール弁29の下端に作用する油圧による押上力と一致し,スプール弁29の両端に作用する力が等しくなるように構成されている。
そして,スプール弁29の上端と下端の空間は,軸孔路48により常時連結され,それぞれにかかる油圧は等しいから,スプール弁29の上端と下端の受圧面積もまた等しくなるように構成されていると認められる。
甲1発明において,油室(孔延長部33)の油圧によってスプール弁29を下方に進出させた状態に保持するためには,スプール弁29の上端に作用する力を下端に作用する力より大きくする必要があるところ,このためには,上端の受圧面積を下端の受圧面積よりも広くするよう構成を変える必要がある。しかるところ,前記(1)イとおり,甲1発明においては,既に,バネ35により,パイロット弁Bのスプール弁29が下方位置へ移動する押下力が与えられている。
そうすると,スプール弁29の押下力がバネ35により既に与えられている甲1発明において,油圧によってスプール弁29を下方に進出させた状態に保持することは,バネ35による押下力に付加して,又はこれを置換して,スプール弁29の上端の受圧面を下端の受圧面積よりも広くするような構成に変えた上で,油圧による押下力を得ようとするものということができるが,これは,甲1発明に,スプール弁29を押し下げるための構成の作用,機能の点で,大きく異なる構成を適用しようとするものであるから,相違点2に係る本件発明1の構成を適用する動機付けがあるということはできない。 」
コスメック、パスカルエンジニアリング
(知財高裁2部森判事、平成29年6月22日)
(2017.7.5. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-07-05 18:31
| 特許裁判例
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