2017年 08月 08日
特許 平成28年(行ケ)10202号 曲げ可能な構造事件(進歩性) |
◆Ti-Ni合金に変えて形状記憶合金を用いるようにした医療機器用の湾曲可能構造の進歩性が問題となった事件。進歩性否定。
【進歩性、特許法29条2項、動機付け、示唆、技術常識、拒絶査定不服審判、審決取消訴訟】
(容易想到性)
「 4 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 引用文献1には,前記3(1)エのとおり,第1実施例のSMAワイヤの代わりにSMAコイルを設けた第2実施例について,「SMAアクチュエータ43のコイル部45は,高温相で収縮状態を記憶させ,低温相では伸長状態となる2方向性のものに限らず,高温相で収縮する1方向性のものでもよい。」と記載されており,引用文献1のカテーテルに使用される可撓管の湾曲機構において,高温相で収縮状態を記憶させ,低温相では伸長状態となる二方向性の形状記憶合金に代えて,高温相で収縮する一方向性の形状記憶合金を用いることについての示唆がある。また,前記2(3)ウのとおり,本願優先日当時,カテーテルの湾曲部の内部に配置される形状記憶合金からなるパイプについて,一方向性の形状記憶合金と二方向性の形状記憶合金とを交換的に用いた公知例(甲2)がある上,前記2(4)~(6)のとおり,一方向性の形状記憶合金を医療用チューブの湾曲部を湾曲する手段に用いること,一方向性の形状記憶合金線材を複数用いて曲げ状態の移行動作のみならず曲げ状態からの復帰動作を行うアクチュエータが知られていたこと,高温相で収縮する一方向性の形状記憶合金をアクチュエータとして用い,加熱による収縮で生じる収縮力をアクチュエータの駆動力とする場合には,あらかじめ低温相において母相(高温相)で記憶された収縮した形状と異なる形状に変形させておく必要があることは,本願優先日当時の技術常識であった。
そうすると,当業者において,引用文献1の上記示唆に基づいて,引用発明の第1及び第2のSMAワイヤ12において,高温相で収縮状態となり,低温相で伸長状態となる二方向性のTi-Ni合金に代えて,高温相で収縮する一方向性の形状記憶合金を採用し,あらかじめ低温相において応力を加えて母相(高温相)で記憶された収縮状態と異なる伸長状態に変形させておくことは,容易に想到し得るものと認められる。
したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,当業者に容易想到である。 」
ネーデルランツ オルガニサ ティー フォール トゥーゲ パスト‐ナトゥールヴェテン シャッペリーク オンデルズーク テーエンオー
(知財高裁2部森判事、平成29年7月27日)
(2017.8.8. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-08-08 12:59
| 特許裁判例
|
Comments(0)