2017年 08月 08日
特許 平成28年(行ケ)10157号 酸味のマスキング方法事件(訂正要件) |
◆ドレッシング等の酸味をマスキングする方法に関し、実施例に基いて追加した訂正事項が新規事項追加に該当するか等が問題となった事件。審決では該当するとしたが、知財高裁では該当しないと判断。
【訂正要件、新たな技術的事項の導入、126条5項、新規事項、無効審判、審決取消訴訟、食品】
(訂正要件)
「(2) 訂正要件判断の当否について
前記1の認定事実によれば,実施例2においては,醸造酢(酸度10%)15部,スクラロース0.0028部等を含有する調味液と塩抜きしたきゅうりを4対6の割合で合わせて瓶詰めをしてピクルスを得た結果,当該ピクルスは,スクラロースを添加していないものに比べて,酸味がマイルドで嗜好性の高いものに仕上がり,ピクルスに対する酸味のマスキング効果が確認されたことが認められる。そうすると,醸造酢を含有する製品として,酸味のマスキング効果を確認した対象は,調味液ではなくピクルスであるから,当該効果を奏するものと確認されたスクラロース濃度は,上記調味液におけるスクラロース濃度ではなく,これに水分等を含むきゅうりを4対6の割合で合わせた後のピクルスのスクラロース濃度であると認めるのが相当である。
…略…
そうすると,製品に添加するスクラロースの下限値を「製品の0.000013重量%」から「0.0028重量%」にする訂正は,特許請求の範囲を減縮するものである上,本件訂正後の「0.0028重量%」という下限値も,本件明細書において酸味のマスキング効果を奏することが開示されていたのであるから,本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
したがって,訂正事項1は,当業者によって本件明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえるから(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号同20年5月30日特別部判決参照),特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものと認めるのが相当である。
以上によれば,訂正事項1が本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合しないとした審決の判断には誤りがあり,原告の主張する取消事由1は理由がある。 」
三栄源エフ・エフ・アイ、ジェイケー スクラロース インコーポレイテッド
(知財高裁1部清水判事、平成29年7月19日)
(2017.8.8. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-08-08 14:55
| 特許裁判例
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