2017年 09月 27日
特許 平成29年(行ケ)10001号 鋼管ポール事件(進歩性) |
◆信号機等を支持するポールの根本部分の構造の発明について、進歩性が問題となった事件。一致点・相違点の認定誤り、進歩性肯定、審決取消し。
【進歩性、一致点・相違点、特許法29条2項、語句の解釈、作用効果↔容易想到性】
(進歩性)
「エ 「基礎体」の意義
よって,本件補正発明の「基礎体」とは,「地中に埋設」され,別の部材である「締付部材」により「支柱」を固定し,支柱の荷重を地盤に伝え,地盤から抵抗を受けることにより,「支柱の下端部を固定する」,「上下に貫通した筒状」の部材という意義を有するものと認められる。
…略…
そして,前記検討によれば,引用発明の「ベース」及び「平板状の羽根」は,別の部材により「支柱」を固定し,支柱の荷重を地盤に伝え,地盤から抵抗を受ける
ことにより,「支柱の下端部を固定する」部材であって,引用発明の,「ベースのパイプの取付部に貫通穴を設けることにより,柱状物は,柱先端部が」「ベースを貫通して土中に突出している」構成は,本件補正発明の「前記支柱は前記基礎体を貫通して先端部分が地中に突出していること」に相当し,引用発明の「土中に埋込んで」は,本件補正発明の「地中に埋設され」に相当し,さらに,これらによれば,引用発明の「ベース」及び「平板状の羽根」は,本件補正発明の「基礎体」に相当する。一方,「パイプ」が,本件補正発明の「基礎体」に相当するということはできない。
したがって,本件補正発明と引用発明とは,「支柱と,前記支柱の下端部を固定する鋼製基礎とを有する鋼管ポールであって,前記鋼製基礎は基礎体から構成され,前記基礎体は地中に埋設され,前記支柱は前記基礎体を貫通して先端部分が地中に突出している鋼管ポール」である点で一致し,相違点1及び2(前記第2の3(2)イ(イ)及び(ウ))のほか,以下の点で相違する(原告主張に係る相違点3に同じ)。 「基礎体」に関して,本件補正発明は「上下に貫通した筒状」であるのに対し,引用発明は「中央部にパイプを溶接で強固に突設し」た「ベース」と当該「ベースのパイプ取付面の四隅に配設し」た「平板状の羽根」とからなる点。
⑷ 相違点3の容易想到性
相違点3に係る本件補正発明の構成は,引用例,周知例1及び周知例2のいずれにも記載されていないし,示唆もされていないから,これらに基づいて,当業者が容易に想到することができたということはできない。
…略…
⑹ 小括
よって,本件審決は,本件補正発明と引用発明との一致点の認定を誤り,相違点3を看過したものである。また,前記(4)のとおり,相違点3に係る本件補正発明の
構成は,引用例1,周知例1及び周知例2に基づいて当業者が容易に想到することができたということはできないから,本件審決による相違点3の看過が,その結論に影響を及ぼすことは明らかである。
なお,被告は,仮に相違点3が存したとしても,原告主張に係る本件補正発明の効果は,本件補正発明の構成に基づくものではないと主張するが,相違点3に係る
本件補正発明の構成を容易に想到すること自体ができないから,上記主張をもって,本件補正発明について,引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができた
ということはできない。 」
ヨシモトポール
(知財高裁4部高部判事、平成29年9月19日)
(2017.9.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-09-27 12:13
| 特許裁判例
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