2017年 10月 27日
特許 平成29年(ネ)10056号 凝集剤事件(錯誤無効) |
◆特許権売買や技術提供に関する1億5千万円の契約につき錯誤による無効が認められた事件(控訴審)。
【契約、錯誤無効、民法95条、動機の表示、売買代金請求事件】
(錯誤無効)
「 …そこで検討するに,上記1の事実経過からすれば,被控訴人Y1が控訴人との取引に至った目的が,控訴人から提供を受ける技術に基づき,凝集剤の製造・販売を事業化して相応の利益を得ることにあるのは明らかであるところ,そのような目的を持つ被控訴人Y1が本件契約を締結したのは,上記技術を用いることが本件特許発明の実施となるとの理解の下,上記事業を行うには被控訴人Y1が本件特許権を保有することが必要であり,しかも,これによって当該事業を独占的に実施することが可能となり,それに相応した利益が得られるものと考えたからであると認められる(そうでなければ,いまだ事業化の現実的な見通しが立っていない技術の提供を受けるために,特許権の買取りを行い,その対価として1億5000万円もの支払義務を負担する契約を締結することは考えにくい。)。ところが,結果的に,控訴人から被控訴人Y1に提供された技術は,凝集剤製造の原料となるカーバイドスラリーを800℃~1300℃で焼成する工程を含まないもの(乾燥カーバイドスラリーを用いるもの)であり,これを用いても本件特許発明を実施することにはならないものであったのであるから,この点において,被控訴人Y1に錯誤が認められることは明らかである(控訴人は,焼成工程を経ない乾燥カーバイドスラリーを用いた凝集剤の製造方法は,本件特許発明を改善進歩させたより良いノウハウであって本件特許に附帯する技術であるという趣旨の主張をする。しかし,特許請求の範囲に含まれない技術は,特許発明の内容とはならず,したがって,独占権が認められることもないのであるから,控訴人から提供される技術が,特許請求の範囲に含まれるかどうかは決定的に重要な事柄であったといわざるを得ず,控訴人の上記主張は採用できない。」
(知財高裁3部鶴岡判事、平成27年9月27日)
(2017.10.27. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-10-27 19:45
| 民法・民事訴訟法
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