2017年 11月 06日
特許 平成28年(行ケ)10211号 エンボス模様を有する長尺材の製造方法事件(進歩性) |
◆自動車座席のシート材等に使用されるシート生地の製造方法の進歩性が問題となった事件。進歩性有り。
【特許法29条2項、動機付け、無効審判、審決取消訴訟】
(容易想到性)
「2 取消事由1(相違点1-1の判断の誤り)
(1) 前記認定事実によれば,甲1発明におけるエンボス加工の対象は布地であるのに対し,本件技術事項におけるエンボス加工の対象は微細光学グリッド構造を作製するための基板であることが認められる。そして,本件技術事項は,微細光学グリッド構造を作製するためのエンボス装置について,金型の凹凸に対応したグリッド構造を有する基板表面層から回折された光(以下,単に「回折光」という。)の強さに応じて,回折測定手段において生成される回折信号に基づき,エンボス圧及びエンボス温度を調整するものであって,微細光学グリッド構造を作製した表面のグリッド構造から回折光が発生することに着目するものである。これに対し,甲1発明は,布地の表面を加工するエンボス装置であって,エンボス加工される布地に応じてエンボス加工の滞留時間,熱及び圧力を決定することによって,エンボス加工されたときに生ずるテカリ領域をなくすものである。そのため,甲1公報には,シートの表面に形成される凹凸模様から,金型の凹凸に対応したグリッド構造に基づく回折光が発生するという記載も示唆もなく,そもそも布地の表面から上記にいう回折光が発生することを認めるに足りる証拠もない。そうすると,布地の表面から回折光が発生するものと認められない以上,甲1発明に上記回折測定手段を組み合わせることはできず,当業者が甲1発明に上記回折測定手段を適用しようとする動機付けを認めることはできない。
したがって,当業者は,甲1発明に対し本件技術事項を適用し,相違点1-1の構成を容易に想到することができたということはできず,相違点1-1に係る審決の判断には誤りはない。 」
TBカワシマ、スミノエテイジンテクノ、コマクソン、ハクサン染工、アクト
(知財高裁1部清水判事、平成29年10月25日)
(2017.10.6. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-11-06 19:20
| 特許裁判例
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