2017年 11月 22日
特許 平成28年(行ケ)10246号 レーザビームを形成するための装置事件(進歩性) |
◆進歩性の判断に関し、引用発明の認定等が問題となった事件。認定誤り無し、進歩性否定。
【特許法29条2項、引例、図面・明細書の記載、設計図面、課題解決手段に直接関連のない箇所の図示態様】
(引用発明の認定)
「 ア これに対し,原告は,審決が認定した引用発明のうち,「前記マイクロレンズアレイは,半導体レーザーアレイの大きさに対応した基板の,入射面に横方向に延在する非球面シリンドリカルレンズが縦方向に複数並設され,出射面に縦方向に延在する非球面シリンドリカルレンズが横方向に複数並設されたものである」との部分は誤りであると主張する。
イ よって検討するに,原告がその根拠とするところは,いずれも,引用文献の図4に,マイクロレンズが縦4×横4個に配置されたマイクロレンズアレイ10の構成が示されており,これが,縦3×横3個の高出力半導体レーザー(【0019】)という半導体レーザーアレイの構成と一致していないことを前提とするものであると解される。
しかしながら,引用文献は公開特許公報であるから,引用文献に掲載された図はいずれも特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ,一般に,特許出願の願書に添付される図面は,明細書の記載内容を補完し,特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから,当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り,設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。
そして,引用発明は,「高出力且つ高輝度の半導体レーザー光を発生させて,それを効率よく集光させることのできる,高電気-光変換効率を有する小型な,新しい半導体レーザーアレイ装置を提供する」(【0007】)という従来技術の課題を,複数の半導体レーザーにより構成された半導体レーザーアレイと,この半導体レーザーアレイのレーザー光出力側に設けられたマイクロレンズアレイとによって半導体レーザーアレイ装置を構成するとともに,各半導体レーザーの活性層の幅を集光に必要な幅とし,各半導体レーザーからの出力レーザー光をマイクロレンズアレイで集光することによって解決したものであり(【0008】),半導体レーザーアレイを構成する半導体レーザーの数やマイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズの数を特定する点に技術的意義を有するものではないから,引用発明に係る半導体レーザーアレイ装置の要部斜視図(甲1,【図面の簡単な説明】)である引用文献の図4によって,半導体レーザーアレイ9からの出力レーザー光がマイクロレンズアレイ10で集光されてマルチモード光ファイバー13に入射する様子の概略を理解できるとしても,半導体レーザーアレイ9を構成する高出力半導体レーザー14の数やマイクロレンズアレイ10を構成するマイクロレンズの数といった,引用発明の課題,解決手段及び作用効果に直接関係のない技術的事項まで正確に表現されていると解するのは相当でない。
したがって,図4を根拠に,引用文献にマイクロレンズが縦4×横4個に配置されたマイクロレンズアレイ10の構成が示されているということはできず,原告の主張は,そもそもその前提において誤りがあるといわざるを得ない。 」
リモ パテントフェルヴァルトゥング ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年11月13日)
(2017.11.22. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-11-22 17:56
| 特許裁判例
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