2017年 06月 02日
商標 平成28年(ワ)6268号 Lockon/ロックオン事件(商§26①1) |
◆被告ホームページ上での標章の表示態様の違いによって、商§26①1(普通に用いられる方法で表示)に該当するか否かの判断が別れた事件。
【商標権侵害訴訟、ウェブサービス、ASP、広告、インターネット、ホームページ、ソフトウェア、商標法26条1項1号、普通に用いられる方法で表示】
(26条1項1号 標章1)
「 イ 被告標章1について
被告標章1は,被告標章6の中に含まれる態様のほかに,「採用情報」のページの動画や「プレスリリース」のページにおいて,上側に「L」字様の図形を,下側に「Impact On The World」の文字を組み合わされる態様で表示されている。
しかし,本件において,被告標章1が他の図形や文字と組み合わされずに単独で使用されている実例は見当たらないから,被告が被告標章1を単体で使用するおそれがあるとはいえない。また,仮に上記の使用態様において被告標章1を単体で把握するとしても,被告標章1は被告の商号を赤色のゴシック体で表記したものであり,自己の商号を自社のホームページ等で着色して表示することは一般的に行われるものである。また,被告標章1のうち被告標章6に含まれる態様のものは,被告のホームページの左上に小さく標記されているにすぎず,それ以外の態様のうち,セミナーの開催告知中で表示されているもの(甲28の1頁)はさほど大きな表示ではなく,被告のホームページ内の「採用情報」のページで YOU TUBE の動画に表示されるもの(甲10の1及び2)は画面中央に目立つ態様で表示されるものの,この動画は需要者というよりは主に求職者を対象とするものであり,求職者に対して社名をアピールすることは通常行われるものである。したがって,被告標章1は,自己の名称を「普通に用いられる方法」により表示したものというべきである。(争点3)
したがって,争点2について判断するまでもなく,被告標章1に係る原告の差止請求は理由がない。 」
(26条1項1号 標章6)
「 ア 被告標章6について
(ア) 前記のとおり,被告標章6は,ホームページ及びパンフレットにおいて表示されているところ,それらホームページ及びパンフレットでは,被告4サービスの項目,説明又は広告宣伝が掲載されている。そうすると,それらにおいて,被告標章6は,被告4サービスの出所表示として機能していると認められるから,被告は,ホームページ及びパンフレットにおいて,被告標章6を被告4サービスの広告に使用しているといえる。(争点2)
この点について,被告は,①被告のホームページの「企業情報」,「採用情報」,「IR情報」,「プレスリリース」のページには,被告標章6が被告4サービスの出所を示すためには用いられておらず,また,②その他の箇所では「株式会社ロックオン」と出所を明記しているから被告各標章の表示によって原告との間で出所の誤認が生じることはない旨主張する。
しかし,①については,確かに,被告のホームページ内の「企業情報」等のページは,会社としての被告自身の広告を行うことを主たる目的とするページであるとは認められるが,同じホームページ内の「事業内容」等のページでは,被告4サービスの広告がなされている上,被告が指摘するページでも,前記認定のとおり被告4サービスのいずれかに言及されている。そして,被告のホームページは,トップ画面から下位の階層の各ページまでの全体がひとまとまりの広告媒体を構成し,各ページ間を自由に移動できるものであるから,ホームページ内で提供役務の広告が行われているときには,ホームページの他の箇所で表示された被告標章6であっても,被告4サービスの出所を表示するものとして機能していると認めるのが相当である。
また,②については,前提事実のとおり被告各標章が本件商標と類似しており,被告が原告と異なる「株式会社ロックオン」であることが需要者の間で周知となっていると認めるに足りる証拠もないことからすると,被告各標章の表示によって出所の誤認混同が生じるおそれはあると認められる。
したがって,被告の上記主張は,採用できない。
(イ) そして,被告標章6は,ゴシック体の「株式会社ロックオン」との文字に,被告の登録商標であり企業ロゴと思われる「L」字様の図形と,被告の登録商標であり,かつ,企業理念ないし企業スローガンである「Impact On The World」との文字がバランスよく組み合わされており,外観上ひとまとまりに把握されるものである。そして,このような企業ロゴ及び企業スローガンと組み合わせられることにより,「株式会社ロックオン」との文字は,それが単体で使用される場合に比べて,特に需者の注意を惹く態様となっている。したがって,被告標章6の使用は,殊更にその部分に需要者の注意を惹きつけることにより,役務の出所を表示させる機能を発揮させる態様での使用というべきであって,自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。(争点3) 」
(別表の記載の商品役務の意義)
「 ア 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成する類別表注釈において 示された商品又は役務についての説明,類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最高裁判所平成23年12月20日判決・民集65巻9号3568頁参照)。 」
(42類と9類)
「 第42類は,その名称を「科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発」とするものであるところ,その出願時の商標法施行規則別表では,「電子計算機のプログラムの設計,作成又は保守」と並んで,「電子計算機用プログラムの提供」が属するものとされ,その出願時に用いられていた国際分類(第10版)を構成する類別表注釈では,第42類に属する役務について,「第42類には,主として,個別的又は集団的に人により提供されるサービスであって,諸活動のうちの複雑な分野の理論的又は実用的な側面に関連するものが含まれる。当該サービスは,科学者,物理学者,エンジニア,コンピュータプログラマー等のような専門家によって提供されるものである。」とされており,特許庁による解説では,「電子計算機のプログラムの設計,作成又は保守」について,「このサービスには,いわゆる,ソフトウェアの開発業者等が提供するサービスが含まれます。」とされ,「電子計算機用プログラムの提供」については,「電気通信回線を通じて,電子計算機用プログラムを利用させるサービスです。」とされ,類似商品・役務審査基準では,「電子計算機用プログラムの提供」は,第9類の「電子計算機用プログラム」に類似するとされている。
そして,第9類では,「電子応用機械器具及びその部品」として,「電子計算機用プログラム」が含まれるとされ,国際分類を構成する類別表注釈では,「この類には,特に,次の商品を含む。」,「記録媒体又は頒布方法の如何に拘わらず,全てのコンピュータプログラム及びソフトウエア,すなわち,磁気媒体に記録されたソフトウェア,又はコンピュータネットワークからダウンロードされるソフトウエア」とされている。(以上,甲33)
これらからすると,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」とは,コンピュータプログラマーによって設計開発されたコンピュータ用プログラムを,電気通信回線を通じて利用させる役務であると解するのが相当であり,「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」とは,コンピュータプログラマー等のソフトウェアの開発業者が電子計算機用プログラムを設計ないし作成し,又はその手直し等をする役務であると解するのが相当である。そして,第9類の「電子計算機用プログラム」がそれによって提供される目的ないし機能を問わないものであることからすると,第42類の役務における上記のプログラムも,その利用により達成される目的ないし機能を問わないものであると解するのが相当である。そして,これは,本件商標権1についても同様であると解される。 」
ビジネスラリアート、ロックオン
(大阪地裁26部高松裁判長、平成29年5月11日)
◆関連 平成28年(ワ)5249号、平成29年5月11日
(2017.6.2 弁理士 鈴木学)
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by manabu16779
| 2017-06-02 21:46
| 商標
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