2016年 10月 24日
著作 平成28年(ネ)10059号トレーニング用箸事件 ~その2~ |
◆実用品の著作物性が争点となっていた事件の控訴審。知財高裁でも著作物性は認められず。

◆東京地裁 平成27年(ワ)27220号 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/868/085868_hanrei.pdf
(実用品の保護可能性) 「(1) 原告各製品が,幼児用箸として実用に供されるためにデザインされた機能的な工業製品であること自体は当事者間に争いがないとろ,原告は,これが「著作物」として著作権法による保護を受ける旨主張する。 (2) そこで検討するに,著作権法2条1項1号は,「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」旨規定し,同条2項は,「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする」と規定している。そして,そもそも,著作権法は,文化的所産に係る権利の保護を図り,もって「文化の発展に寄与すること」を目的とするものである(同法1条参照)。これに対し,産業的所産に係る権利の保護については,工業上利用することができる意匠(物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの)につき,所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができる(同法2条1項,3条ないし5条,6条,20条1項等参照)など,工業所有権法ないし産業財産権法の定めが設けられており,このほか,商品の形態については,不正競争防止法により,「実質的に同一の形態」等の要件の下に3年の期間に限定して保護がされている(同法2条1項3号,同条5項,19条1項5号イ等参照)。 以上のような各法制度の目的・性格を含め我が国の現行法が想定しているところを考慮すれば,実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは,その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り,著作権法が保護を予定している対象ではなく,同法2条1項1号の「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」に当たらないというべきである。 なお,原告は,実用に供される機能的な工業製品やそのデザインであっても,他の表現物と同様に,表現に作成者の何らかの個性が発揮されていれば,創作性があるものとして著作物性を肯認すべきである旨主張するけれども,著作権は原則として著作者の死後又は著作物の公表後50年という長期間にわたって存続すること(著作権法51条2項,53条1項)などをも考慮すると,上述のとおり現行の法体系に照らし著作権法が想定していると解されるところを超えてまで保護の対象を広げるような解釈は相当でないといわざるを得ず,原告の上記主張を採用することはできない。 」 ケイジェイシーvs.スケーター (東京地裁29部 嶋末裁判長) (2016.5.11. 弁理士 鈴木学) (2016.10.24. 追記)
【応用美術、著作物性、著§2①1、実用品、量産品、意匠法、不競法§2①3、美的鑑賞の対象となり得るもの、エジソンの箸】

「
(エ) 以上に基づいて検討するに,まず,箸を連結すること自体はアイデア
であって表現ではない(なお,連結部分にキャラクターを表現することも,それ自体はアイデアであって,著作権法上保護すべき表現には当たらない。)し,その具体的な連結の態様を見ても,原告各製品が他社製品(甲16~26)と比較して特徴的であるとまではいえず,まして美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは認め難い。よって,前記①の点に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。 次に,箸を持つ指やその位置が決まっている以上,これを固定しようと考えれば,固定部材を置く位置は自ずと決まるものであるし,人差し指,中指,親指の3指を固定することや固定部材として指挿入用のリングを設けることも,例えば,原告各製品が製造販売されるより前に刊行された乙5,7,8の各公報においても類似の構成が図示されている(すなわち,乙5及び乙7には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が親指と薬指を入れる2つのリングを有するものが図示されている。乙8には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が薬指を入れる1つのリングを有するものが図示されている。)ように,特段目新しいことではない。原告各製品も通常指を置く位置によくあるリングを設け
たにすぎず,その配置や角度等に実用的観点からの工夫があったとして
も,美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされてい
るとは認め難い。よって,前記②の点についても,美術の著作物としての創作性を認めることはできない。 (オ) 以上のとおり,控訴人が主張する前記①②の点は,いずれも実用的観点から選択された構成ないし表現にすぎず,総合的に見ても何ら美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えるものではない。
よって,前記①②の点を理由に,原告各製品について美術の著作物と
しての著作物性を認めることはできないというべきである。
」(知財高裁3部鶴岡判事)
・実用品であるトレーニング箸について、著作物として保護されるか否かが問題となった事件。保護されず。
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by manabu16779
| 2016-10-24 12:57
| 著作権法
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